◇ホテル、サービスアパートメント

商業施設の他、アジアREITの不動産ポートフォリオでは、ホテル比率の高さも特徴となっている(図表-7)。

海外企業の活動が活発なアジアの主要都市では、高級ホテルに対するビジネス用途需要が強く(9)、投資対象としても人気が高い。また、日本国内ではあまり一般的ではないが、サービスアパートメント(10)への投資も目立つ。海外からの長期出張者や駐在員の宿泊需要が高水準にあり、高級サービスアパートメントが広く普及している。

一方、J-REITにとって一般的な賃貸マンション投資は、アジアREITの間でほとんどみられない。S-REITのSaizenREITなどが実施しているものの、それらは日本の賃貸マンションへの投資である。

個人のコンドミニアム取得需要が強いアジアの主要都市では、分譲販売が優先され、REITなどの投資家が1棟全体を取得する機会はほとんどない。また、キャピタルゲイン目当ての個人が高値で積極取得するなか、コンドミニアム投資においてREITが求める利回りを確保することは非常に難しい。

◇物流施設

世界有数の貿易港であるシンガポールでは、物流施設の投資や証券化が発達しており、以前から、S-REITの不動産ポートフォリオにおける物流比率は一定水準以上であった(図表-9)。

一方、日本国内でも、2012年末以降、大型の物流REITが相次いで上場した。それらによりJ-REITの不動産ポートフォリオにおける物流比率は1割に達し(図表-8)、既に、アジアREIT全体およびS-REITの物流比率を上回っている。

S-REIT 不動産ポートフォリオ

◇郊外型オフィス、産業用オフィス

日本国内では馴染みの薄いセクターといえるが、郊外型オフィスや、産業用オフィスは、アジアREITの主な投資対象のひとつになっている。郊外型オフィスは、大規模なものはビジネスパークやサイエンスパークと呼ばれ、広々とした敷地に建つ大規模フロアの中低層ハイグレードビルが多い。

元来のターゲットテナントは企業の研究開発部門などであるが、郊外立地で低賃料のため、対外活動の不要な事務業務などに幅広く利用されている。近年の欧州危機に際し、欧米金融機関のコスト削減として、バックオフィス部門をCBDからビジネスパークに移転するケースが増加した。その他にも、コールセンターや保険会社の事務部門などの入居も多い。

また、産業用オフィスとしては、製造工程を内包する郊外のオフィスビルなどが典型的である。テナントの製造業各社はオフィスとして利用するだけでなく、製造ラインを導入して製造活動も行っている。

製造業1社で単独賃貸するケースの他、複数の中小企業が入居するケースもある。一般的にオフィスとしてのグレードは低く、玄関ロビーが簡略的なもの、空調が完備されていないものなど様々である。ただし、一部の大規模物件では、大企業の工場兼本社としてハイスペックなオフィス機能を備えている場合もある。

ちなみに日本国内では、製造業各社が自社工場を所有する場合が多く、REITなどの投資家が産業用オフィスに投資するケースは少ない(11)。