◉今回の上場(IPO)の株価水準について
想定株価の妥当性を見るために、EV/EBITDA倍率を計算してみましょう。EV/EBITDA倍率は、企業の買収資金を何年で回収出来るかを示す指標です。計算方法には幾つか種類がありますが、ここでは、
EV = 時価総額 + 有利子負債 - 現金及び預金
EBITDA = 営業利益 + 減価償却費 + のれん償却額
を利用し、EV÷EBITDAで計算します。EVは当該企業を買収するのに必要な額です。EBITDAは利払い・税引き・減価償却前の利益であり、本業1年で稼ぐ事が出来る金額を示す。もし、企業を買収する場合、その買収コストを何年で回収出来るかを簡易的に計算出来ます。
想定株価は2700円、発行済株式総数は25,806,440株であるので、推定時価総額は696億7738万8000円です。平成25年6月期時点で有利子負債は59億1200万円となります。現金及び預金は718億9500万円です。よって、平成25年6月期基準にすると、EVは僅か36.94億円となってしまいます。EBITDAが141億円なので、EV/EBITDA倍率は僅か0.26倍になってしまいます。
この数値は明らかに不自然であり、いくらなんでも想定株価が安すぎるので、
・想定株価が割安に設定されている
・今期の有利子負債が増えている
・今期の現金及び預金が減っている
・今期の営業利益が減っている
のいずれか又は複数が起こっていると予想出来ます。
とは言え、それを差し引いても想定株価はかなり割安である可能性が高いです。
◉今回の上場(IPO)の投資対象としての評価について
ここまでの内容を簡単に整理すると、
・東京都と相まって中心市場である茨城県など東京近郊の経済が回復傾向にある
・現金及び預金を多く確保しており、短期の債務償還能力は極めて高い
・事業の効率性は高い
・想定株価は割安な水準である
となります。
これだけ見ると投資対象として魅力的に映りますが、もう少し冷静に見ると、
・現金及び預金を過度に多く確保し、事業拡大には消極的である
と言えるかもしれません。
今回の上場も新株を発行せず売り出しだけなので、積極的に事業拡大を目指して上場するわけでもなさそうなので、その意味で将来性があるかというと疑問です。
積極的な投資活動を行わない保守的な経営姿勢は、競争環境が大きく変わらない限りは景気回復に沿って安定的な成長をもたらすかもしれませんが、競合企業の登場や新しいビジネスの拡大などが収益性を悪化させるリスクもあるかもしれません。
短期的には安定的に配当金などを得られる可能性がありますが、長期的に投資対象として検討するならば、事業の姿勢など新たな投資活動にも注視していく必要があるでしょう。
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参考文献
[1]
ジョイフル本田ウェブサイト
[2] ジョイフル本田有価証券届出書(
EDINET
で検索すると参照出来ます)
[3]
茨城県ウェブサイト「いばらき統計情報ネットワーク」