(写真=PIXTA 本記事は 週刊ビル経営7月13日号 に掲載されたものです)
安心な中古住宅取引市場の形成へ
国土交通省による、中古住宅市場拡大に向けた様々な取組みが行われている中、宅建業者を中心とした事業者間連携を推し進める取組みが、いよいよ佳境に入ってきました。
中古住宅市場の拡大に際して課題となる諸問題の中でも、特に売主と買主との間において生じている著しい情報格差をどうやって埋めていくか?そして、そのために必要なこととは何か?について、国土交通省は宅建業者を中心とした事業者連携団体からの提案を過去3か年に渡り採択して支援をしてきました。今回のコラムでは、この取組みの目的と現状、そしてこれからの課題についてご紹介していきたいと思います。
中古住宅市場を取り巻く現状
現在の中古不動産取引では、売主や宅建業者から物件に関する情報開示が不十分であると言われています。新築物件を売買する際には設計図書も存在し、現行法に適合している等を証明する「検査済証」も交付されますが、中古不動産の取引ではそれらの情報が残っていない場合も少なくありません。そのような得体の知れない不動産を、素人同然の消費者が目視で購入判断させられてきた、そして今も殆どのケースにおいて同じ状況で判断しているのが現状です。
しかし、本来売主である所有者にはそれらの情報を始めとして、居住しながら得られる、例えば建物の些細な不具合やメンテナンスの必要性についての情報も持っているのです。これら、売主と買主との情報に格差が生じ、買主の適切な購入判断に充分な情報が行き渡っていないのです。また、宅建業者の主たる業務が物件情報の提供のみに終始し、買主に対して必要とされるコンサルティングも十分行われていません。
本来宅建業者が行うべき業務とは、公正な不動産取引の実現のために必要な情報の整備・検討・調査を行い提供し、安心・安全な取り引きを実現されることでしょう。しかし、これまでの宅建業務においては、その重要な部分が不足しており、消費者が本来のニーズに合致した物件を選択しにくい状況にあることが、中古住宅取引を阻害する要因となっています。
このような状況を改善するため、平成24年度から事業者間連携による新たなビジネスモデル構築の取組みがスタートしました。まず消費者に対して様々なサービスをワンストップで提供するモデルを開発するために、全国12の協議会が国土交通省により採択され、平成25年度には新たに2つの協議会が加わり、合計14協議会が「消費者が安心して不動産取引が出来る不動産流通市場の整備」を目指して活動を行ってきました。
また、平成26年度には宅建業者を中心とした不動産関連事業者による連携体が加わり、合計17の連携体により開発されたモデル等を活用して、消費者情報提供を行うことを目的とした「消費者への情報提供の促進等に係る先進的な取組み」として様々な取組みが行われました。