世界の大富豪として今でもランキングの常連であるビル・ゲイツ氏は、2008年に第一線を退いて以降、慈善事業に多くの時間を費やすようになった。夫人と共にビル&メリンダ ゲイツ財団を設立した。
ここには、米オラクルのラリー・エリソン氏やマイクロソフト共同創業者のポール・アレン氏、米イーベイ創業者のピエール・オミダイア氏、米クアルコム共同創業者のアーウィン・ジェイコブズ氏などの IT 関連者のほか、ベンチャーキャピタリストのジョン・ドーア氏、映画監督のジョージ・ルーカス氏、ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏らが名を連ねている。米国の富豪の間では、フィランソロピーという行為が至極当たり前のものとして定着しているのだ。
フィランソロピーにはビジネスとの接点が存在
フィランソロピーという行為には、慈善事業という側面とともに、富裕層が社会貢献によって得られる「信用」を獲得するところに大きな魅力が隠されている。慈善事業による社会的な信用度の高まりは、たとえ意図しないものであっても、非常に大きなものとして自分に戻ってくる。
当然、ビジネスとの結びつきや各国の経済界との結びつきも強固なものとなり、寄付金の金額では計り知れない利益をもたらすのである。まさに富豪ならではのソーシャルコミュニケーションの実現だ。
税制上の優遇も大きなポイント
また欧米における税制上のメリットの確立も、こうしたフィランソロピーが広がる大きな理由にもなっている。米国では、所得の最大5割の寄付が税控除の対象となっており、生前から寄付を行う富裕層が格段に増えていることも、慈善事業の制度を大きく後押ししている。
こうした欧米の文化に比較して、日本では、寄付行為は人知れず行うものというイメージがある。税制上の問題や寄付の秘匿性を厳守したがる国内の富裕層の発想からして、日本におけるフィランソロピーは、今後もなかなか定着しないものとなりそうだ。(ZUU online 編集部)