「1807年にイギリスに移住したとしたら賢い選択でした。1907年に米国に移住する事も同じだ。2007年にアジアに移住したことが賢い選択と言えるかどうか、今にわかるさ」
世界的投資家、ジム・ロジャーズ氏はこのように語り、アジアの可能性に賭け、2007年、米国からシンガポールに移住した。また、フェイスブックの共同創業者、エドゥアルド・サベリン氏もシンガポールへの移住を行う等、個人レベルでのアジア移住はこれまでもいくつか例はあった
しかし、英国に本社を置く金融機関がアジアへの本社移転を画策しており、大きな話題を呼んでいる。英国系の銀行が実際に本社の移転を検討しているのは驚くべきことだ。
HSBCがまさかの英国離れ?
HSBCはイギリス、ロンドンに本社を置く世界最大級の金融グループだ。1865年に香港で創設された香港上海銀行から発展し、1991年に設立、その名称も香港上海銀行の略称であるHSBCに由来する。世界88か国に進出し、1万以上の支店網を有する。
リーマンショックの影響も軽微で、比較的好調な業績をキープしていたが、今年に入って、5万人のリストラを断行する必要性に迫られるなど、必ずしも業績的に順調というわけではない。また、英当局からの課税圧力が強まったことや、グローバル金融規制の強まりを受け、多額の資本が必要になることを嫌って、英国からの本社移転を画策しているという。
同社のスチュアート・ガリバー最高経営責任者(CEO)は本社の移転先を決める際の要素として、移転先の国家の経済規模や税・法制度の透明性が高いことなどを挙げているが、「仮に英国を去ることになった場合は、移転作業に2年ほどかかる」と説明している。
有力な移転先として、上記の条件を満たす「香港」を候補に挙げる市場参加者も多い。同社は年内には移転するかどうかを判断するという。