夏休みを前にした7月は、ギリシャの債務問題と中国の株価の急落によって、世界経済にとって1つの修羅場を迎えた。
前者は、ギリシャと欧州連合(EU)との間で、金融支援再開で合意。銀行の営業休止が続き、市民がATMの前で引き出し限度額まで現金を下ろすのに列を成す姿は、経済ニュースで度々取り上げられたが、ギリシャの銀行は営業を再開し、ひとまず事態は沈静化した。
後者の問題は、いよいよ中国バブルの崩壊かとも見られたが、中国政府による株式市場への介入で、市場の下落にはいったん歯止めがかかった。中国経済に世界の注目が集まる中、とりわけ中国経済への依存度が大きく、神経をとがらせているのが韓国だ。
円安にMERS、中国経済減速のトリプルパンチ
日本以上に輸出が国の経済のけん引役となる韓国だが、2015年上半期の輸出入実績 (暫定)によると、輸出額は2,690億ドル(約33兆3,560億円)で、昨年同期比5.0%減少した。
円安ウォン高などの影響から、対日本への輸出額は同17.6%のマイナスとなった。さらに、最大の輸出相手国である中国に対しては同2.1%減となった。
為替以外にも韓国経済にとって大きな打撃となったのは中東呼吸器症候群 (MERS) の感染拡大だ。これまでに36人が死亡し、韓国政府が初期対応を誤ったため、被害が拡大したとの非難が上がった。最初に感染が確認されてから2ケ月の期間を経て、ようやく事態は落ち着き、8月中旬にも韓国政府が終息宣言を出すとみられる。
この間、外国人観光客の減少や、個人消費が控えられたことなどMERSが韓国経済に残した爪痕は大きい。日本政府観光局(JNTO)によると2015年1月~5月の訪日外国人観光客は、前年同期比44.9%増の753万7,8000人とインバウンドが好調だった日本とは対照的だ。
こうした事態を受け、中央銀行にあたる韓国銀行は6月、政策金利を0.25%引き下げ、過去最低水準となる1.5%とした。
また、アジア開発銀行(ADB)は、2015年の韓国の成長率の見通しについて、3月時点の3.5%から3.0%に下方修正、さらに2016年の見通しに関しても、3.7%から3.5%に引き下げた。ADBはMERSの流行による影響と米中の経済成長のテンポが遅く、輸出主導の韓国経済にとっては厳しい状況から見通しの改定に踏み切った。
韓国経済の頼みの綱となるのはやはり中国だ。2013年に韓国は日本を抜いて初めて、中国最大の輸入相手国となった。円安で韓国製品の日本市場における価格競争力が弱まる中、中国への輸出や投資を増やし、中国市場への依存度がますます高まっている。
中国経済の減速で真っ先に打撃を受ける韓国
その中国経済は「新常態(ニューノーマル)」の時期に突入し、経済成長率の目標を7%前後に引き下げ、安定した経済運営を目指している。窮地に陥っている韓国経済の救世主となるほど、中国の成長エンジンもかつてほどの勢いはないのが現状だ。
中国経済がバブル状態で、それがいつはじけるのかという懸念も絶えないが、中国経済が減速すれば、真っ先に打撃を受け危機に見舞われるのは他でもない韓国経済かもしれない。(ZUU online 編集部)
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