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(写真=Thinkstock/Getty Images)

米国経済が原油安とドル高のダブルパンチを受け、前年比3%成長との2015年の予想にかげりが出るのではないかという懸念が強まっている。

イエレン議長をはじめとする米連邦準備制度理事会(FRB)高官は、年内の利上げ開始に依然として強気だが、ドル高が国内総生産(GDP)などの重要指標に悪影響を与えていることが明確になれば、現在最有力である9月利上げ説が後退し、FRB当局者のハト派的発言で一時的にドルの下落を誘導する「ドル安政策」が採られる可能性も排除できない。

こうしたなか、ニューヨーク原油先物相場は供給過剰感が再び強まり、指標の米国産標準油種(WTI)9月渡しの終値が7月22日、1バレルあたり50ドルの大台を割り込んだ。世界銀行が同日発表した予測によると、供給過多が近い将来解消される見込みはなく、原油価格押し下げ圧力は続くとされる。

世銀やその他の専門家の予想では、2015年通年での原油平均価格は1バレルあたり55ドルから65ドルの間だ。その一方で、経済専門局のCNBCは「WTI が今年3月につけた2015年最安値の42ドル台に再接近することもあり得る」とのアナリストの見方を伝えている。

そうなれば、前回原油安の局面を乗り切ったばかりの米石油業界にあって、油井・ガス井やその探査への投資額が減り、石油業界の雇用が不安定化し、米経済全体へ波及的に悪影響が及ぶ可能性も出てくる。

ここで注目されるのは、この原油安にドル高が絡んでいることだ。ドルが主要通貨に対して上昇したことで、ドル建てで取引される原油先物に割高感が強まり、相場を押し下げたというのだ。

今年1月にジャック・ルー米財務長官は、「ドル高は米経済にとってよいことだ」と述べ、ドル高に政策的な支持を示唆したが、その認識は近いうちに修正を迫られることになるかもしれない。

FRBの金融政策を実行する12の地区連銀のひとつで、その地域経済規模から別格扱いされているニューヨーク連銀が7月17日に発表した「ドル高が米経済の成長に与える影響」という論文が各方面の注目を浴びている。こうした研究がFRBの政策修正を後押しする可能性もある。

同論文の調査結果で最も引用されているのが、「ひとつの四半期に米ドルの他通貨に対する価値が10%上昇して、その状態が1年間持続した場合、輸出減少でGDPが通年で0.5%ポイント下落する。2年間持続すると、GDPは2年目の通年で0.7%ポイント下落する」とする分析結果だ。過去1年のドル上昇率は10%を超えている。加えて、持続的なため、GDPへの押し下げ圧力は1%ポイントを超えているだろう。

こうしたなか、以前から心配されていたドル高による米企業収益への悪影響が鮮明になってきた。収益を伸ばしたコカコーラなど一部の企業を除き、IBM、ユナイテッド・テクノロジーズ、アメリカン・エキスプレス、ハーレーダビッドソンなど米大手企業が軒並みドル高によって利益に大打撃を受けたことを、ここ数日の間に発表しているからだ。


ドル安政策はあるのか

ギリシャ債務問題や中国株価急落などの大きな懸案がひとまず落ち着いたことで、投資家の視線は米利上げに向いている。ドル高を加速させることになる最初の利上げを、FRBが9月に実行できるかどうかが市場の目下の関心事だ。

企業の業績には、すでにドル高の悪影響がはっきり現れている。これが、そうした企業による雇用抑制・レイオフなどにつながれば、雇用指標が悪化し、不安心理から消費意欲の減退が起こり、物価上昇率もスローダウンしかねない。

FRBは年内利上げに自信を見せ、ヤル気満々であるが、ギリシャや中国ではなく自国経済の成長を妨げるドル安は大きな障害だ。そうした局面での利上げで、ドル高がさらに進行して景気を冷やすことは避けたいはずだ。

米政府当局者がドル高進行を口先介入で抑制する、FRB高官がハト派的発言でドル安を狙うなどの展開も予想される。

(在米ジャーナリスト 岩田太郎)

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