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(写真=PIXTA)


はじめに

債券の運用現場において、イールドカーブは様々な方法で利用されている。

イールドカーブ上で割安な(利回りの高い)銘柄を購入し割高な(利回りの低い)銘柄を売却するなどの裁定取引、イールドカーブの形状は将来の(短期)金利を反映していると考え(純粋期待仮説)金利予想の参考にする方法、イールドカーブの形状をモデル化するなどして将来のイールドカーブ形状の変化を捉えて収益を狙う運用、社債など時価が不透明な債券を評価するために国債イールドカーブとの差(スプレッド)を見る方法など様々である。

更に、運用現場以外でも退職給付債務の時価評価にイールドカーブを活用するなど、会計の領域でもイールドカーブは利用されている。このように様々な場面で利用されているイールドカーブであるが、その見方には注意すべき点がある。

イールドカーブとは、金利と期間の関係をグラフで示したものであり、金利は期間に対応してリスクが高くなるため、基本的には右肩上りの滑らかな曲線を描く。

しかし、過去のイールドカーブを見ると、必ずしもきれいな曲線を描くばかりではない。曲線が歪んでいることや、そもそも線(カーブ)を描くことが難しいような局面もある。

これは、イールドカーブが、金利は景気が良くなれば上昇し景気が悪くなれば低下するという、経済合理性を踏まえた純粋な金利決定要因(以下、純粋な要因)のみによって形成されているのではなく、流動性や需給などその他多くの要因が含まれて決定されているためと考えられる。

このように、過去のイールドカーブデータは様々な要因を含んで形成されているため、全てのデータを同じように使用すると意図した分析にならない可能性がある。

そこで、本レポートでは国債が発行されてきた歴史を振り返り、イールドカーブが形成されていく過程を見ていくことにより、イールドカーブを分析する際に利用するのに相応しいデータ期間を検討する。

また、直近では日銀による国債の大量購入が続いており、現在もまた純粋な要因以外の要因でイールドカーブが変化している可能性がある。そのため、日銀による国債購入によりイールドカーブがどのように変化してきたのかを検証する。