日銀による国債購入の影響

日銀による国債の大量購入が続いているが、購入している国債には特徴がある。現在、日銀は毎月10兆円近い金額の国債(利付国債)を購入している。

これを、残存期間別に見ると、残存10年以下と10年超の比率は8:2と偏りがある(2015/1~6の6ヶ月間)。つまり、日銀の国債購入はより短い年限に集中している。その結果、イールドカーブは10年以下がより強く低下する、S字の形状に歪んでいると考えられる。

そこで、イールドカーブの歪みがどのように変化してきたかを時系列で見るため、主成分分析を実施した。主成分分析では、基本となるデータ(主成分)を抽出する期間が重要となるが、ここでは成分抽出期間をイールドカーブの形状が超長期債も含めて最も安定していたと考えられる2003年9月末~2007年12月末とし(この期間のイールドカーブが本来あるべきイールドカーブの形状と考え)た。

2003年前半はVarショックでマーケットが大きく変動したため対象外とした。また、2008年前半からは国債先物の受渡適格銘柄のうち最割安銘柄(期間7年)が品不足になり、7年ゾーンを中心にイールドカーブが大きく歪んだ。そして、2008年9月のリーマン・ショック等を受け、日銀はそれまでの金融引締め(金利上昇)政策を変更し、金融緩和(金利低下)政策へ向かった。そのため、2008年以降も対象外とした。

イールドカーブは基本的に3つの成分(水準、傾き、曲り)で出来ていると考えられる。そのため、主な成分を3つ抽出した(図表4)。

主な成分の形状

抽出された3つの成分から現在のイールドカーブに最も近い形状の理論イールドカーブを作成した(最小二乗法(ii))。実際のイールドカーブが理論イールドカーブから乖離しているゾーンが割高または割安となる。そこで、理論イールドカーブと実際のイールドカーブの差を時系列で計測した(図表5)。

実際のイールドカーブと理論イールドカーブの差

その結果、想定通り日銀が積極的に国債を購入している10年ゾーンは割高、日銀の購入が比較的少ない20年のゾーンは割安に推移していた。

30年債が2008年以前は割安、それ以降は割高に推移しているが、これは1999年に30年債が発行開始されて以降、発行量が少しずつ増えてきており、投資家層が安定してきたので、その流れを反映したものと考えられる。10年債と20年債の歪みは2008年以降に拡大し、現在もその歪みは続いている。

しかし、歪みの発生時点は、日銀が国債を大量に購入し始めた2013年ではなく、2008年となっている。そのことから、歪みの原因は日銀の国債直接購入のみが要因ではなく、その他の要因(金融緩和政策を受けた投資家の先回り買い、リーマン・ショックを受けたリスクオフ(短期債購入)の動き、国債先物の最割安銘柄買占めの動きなど)も含まれていると考えられる。