「オマハの賢人」と呼ばれる伝説の投資家、ウォーレン・バフェット氏は1930年、米ネブラスカ州オマハで生まれた。綿密な企業分析と社会分析に基づく長期の株式投資を武器に大富豪の常連となった同氏は、世界最大の投資持株会社バークシャー・ハサウェイの経営最高責任者を務める。

ここでは、5月初めに開催された同社の株主総会から、バフェット氏の哲学の一端や現在の米国株に対しての見解について触れてみたい。

綿紡績企業からの転換

1888年に綿紡績事業を営む企業として設立されたハサウェイ製造会社は、第二次世界大戦後は毛織物産業全般の衰退に苦しむことになる。この会社の株式を取得し始めた氏は、「会社本来の価値よりも安価」と判断。当時の経営者との幾度かの衝突を経ながらも、最終的には経営を支配するに至る。

バフェット氏は、ハサウェイの中核ビジネスだった毛織物紡績業を維持する一方、次第に事業内容を拡大していった。そして1970年代終盤には今日のバークシャーを支える保険業務・投資業の中核を形成し、1985年に「最後の毛織物事業」が終焉を告げたのである。

米国で5本の指に入る企業規模に

今年の5月2日、バークシャー・ハサウェイが本社を構える米中西部ネブラスカ州オマハで開かれた株主総会は、氏によって同社が投資会社へと姿を変えてから50年目にあたる節目の総会とあって、過去最多の4万人を超える株主が世界中から集まった。

株式投資のほか保険やエネルギー事業など、広範な事業を営むバークシャー・ハサウェイの年間の純利益はおよそ200億ドル(約2.4兆円)。時価総額は約3500億ドル(42兆円)を超え、エクソンモービルやマイクロソフトなどと並んで米国で5本の指に入る規模に到達している。

最大の特徴は「哲学」にあり

けれども、バフェット氏が多くの信奉者を惹きつけて止まないのは、700億ドルを超える資産でも、米「フォーブス」誌の長者番付第3位という事実でもない。氏の生き方の隅々にまで「金儲けは純粋な知的活動だ」とする哲学が貫かれていて、富の蓄積が最大の目的ではないからである。

その哲学は、バークシャー・ハサウェイの企業風土にも端的に表れている。「質素」、「生真面目」、「評判を大切にする」、「親族のような一体感」、「基本の重視」。これらはある意味「優れた日本企業」に共通するものなのかもしれないが、氏が重視する要素には「企業家精神の重視」、「権力の分散による自律性」。そして最も大切にしているのが「永続性」であることを忘れてはならない。

「絶対に売らない」との約束が割安な買収を実現し、3四半期毎に業績を迫られることのない子会社幹部は、長期的なビジョンに立った経営に専念できるのである。

「米国株、金利戻れば割高」

バフェット氏は今回の定時株主総会において、過去最高値圏にある米株式相場について「米国のビジネス環境が良好なことを示している」と評価し、高値は許容できる範囲であるとの見方を示した。けれどもその一方で、「株高を支えているのは低金利」であり「金利が通常水準に戻れば、現在の株価水準は割高に見える」とも語っている。

同氏は、かねてより早期のゼロ金利政策の解除に慎重な発言を繰り返してきたが、この場でも改めて「低金利でも何ら悪いことは起こらなかった」と金融緩和政策を評価した。

仮に将来、経済が混乱する局面を迎えた場合には「バークシャーは心理的にも財務的にも喜んで資金を供給する準備がある」とも述べている。(ZUU online 編集部)

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