消費者物価指数(6月)
6月の消費者物価上昇率(前年同月比、以下CPI上昇率)は、年明け以降の原油価格の底入れを受けて下げ止まる傾向が見られた(図表5)。
インドのCPI上昇率は前年同月比+5.4%と、2ヵ月連続で上昇した。2月末から4月にかけて見舞われた季節外れの大雨の影響を受けて、糖類など一部の食料品の高騰が上昇圧力となった。
またインドネシアのCPI上昇率は同+7.3%と4ヵ月続けて上昇し、マレーシアのCPI上昇率は同+2.5%と上昇した。ラマダン(断食月)の開始日が昨年から前ずれ(1)したことによる食料価格の上昇が全体を押し上げた。
一方、フィリピンのCPI上昇率は同+1.2%と、食料価格を中心に前月から0.4%低下し、約20年ぶりの低水準を記録した。しかし、先行きは台風被害や干ばつ被害を受けて穀物価格を中心に物価上昇する恐れがある。
7月は、韓国・マレーシア・インドネシアの中央銀行で金融政策会合が開かれた。全ての会合で政策金利は据え置かれた。韓国は輸出を中心に景気が低迷しているが、6月にMERSの感染拡大による景気下振れリスクを受けて利下げされたばかりであるために様子見となった。
マレーシアは世界的な成長力と金融環境においてリスクが高まっていることを考慮し、経済成長を支える現行の緩和的な金融政策を維持した。またインドネシアは高インフレと経常赤字の抑制に対応して現行の高めの政策金利を維持した。
金融市場(7月)
7月のアジア新興国・地域の株価は、マレーシア・インドを除く国・地域で下落した(図表6)。
月上旬はギリシャのユーロ圏離脱に対する懸念の高まり、中国では当局が株価下支え策を相次いで打ち出したにも関わらず株価下落が続くなど、投資家の心理が悪化した。その後もアジア地域は中国向け輸出の鈍化や中国人観光客の減少に対する懸念、米連邦準備理事会(FRB)による年内の利上げ観測が意識されて資金流出が続いたことも株価下落に繋がった。
国別に見ると、インドは自動車や銀行など主力企業の好調な決算が株価上昇に繋がった。一方、韓国はIT関連の業績悪化や4-6月期のGDPの減速、台湾は貿易統計や鉱工業生産指数など経済指標の悪化、タイは干ばつや家計債務の拡大による景気回復の遅れ、「双子の赤字」を抱えるインドネシアは米利上げ観測の高まりに対する警戒感が強く、株価下落に繋がった。
為替(対ドル)は、月前半のギリシャ支援協議を巡る混乱や中国株下落など投資家心理が悪化するなか、アジア経済の景気減速や米国の年内の利上げに対する懸念が材料視されて、アジア新興国・地域の通貨は下落した(図表7)。
国別に見ると、韓国・台湾・タイなど輸出主導経済の国・地域は足もとの輸出減少による景気後退が懸念されて通貨の下落幅が大きくなった。