7月の注目ニュース、今後の注目点など

◆韓国・台湾:2015年4-6月期GDPを公表(23日、31日)

韓国では23日、台湾では31日に2015年4-6月期のGDP統計が公表された。4-6月期の実質GDP成長率は、韓国が前年同期比+2.2%と前期の同+2.5%から低下し、台湾が同+0.6%と前期の同+3.4%から大きく低下した。

韓国は5-6月におけるMERSの感染拡大の影響を受けて、外出を自粛する動きの広がりによって個人消費が鈍化し、外国人観光客による訪韓キャンセルでサービス輸出が悪化したことも成長率の低下に繋がった。

また台湾は、内需が堅調を維持したにも関わらず、これまで好調だった輸出下振れの影響が大きく、6四半期続いた+3~4%台の成長率からの大幅に経済が失速する結果となった。

輸出主導経済である韓国・台湾は、最大の輸出先である中国をはじめ海外経済の低迷の影響を色濃く受けており、先行きも輸出不振による景気の停滞が長引く可能性が高まっている。

◆台湾:洪氏が総統選の国民党公認候補に決定(19日)

台湾では19日、国民党大会が開かれ、洪秀柱立法院副院長が2016年1月に実施される総統選挙の党公認候補として指名された。

昨年3-4月には両岸サービス貿易協定の発効を阻止するために学生らが立法院を占拠する事態(ひまわり学生運動)が起きるなど、国民党の対中融和路線に対する世論の厳しい評価が続くなか、有力候補と見られた朱立倫主席や王金平立法院長、呉敦義副総統らは立候補を見送った。

洪氏は8年ぶりの政権交代を目指す野党・民進党の蔡英文主席と次期総統の座を争うこととなる。両岸関係を巡っては、洪氏は92年コンセンサスの「一つの中国、それぞれの解釈」を基礎とする協調路線を引き継いで和平協定の締結を目指す一方、蔡氏は現状維持する方針である。

台湾指標民調が7月14日に発表した調査結果によると、蔡氏の支持率54.0%に対して洪氏は19.5%と、蔡氏が大きくリードしている状況である。今後は総統選の支持率の動向に加えて、総統選と同日に実施される立法委員選挙において野党・民進党が過半数を獲得することができるか、といった点でも注目が集まる。

◆マレーシア:1MDBに関する汚職問題で内閣改造(28日)

マレーシアでは、28日に内閣改造を行い、ムヒディン・ヤシン副首相を解任し、アーマド・ザヒド・アミディ内相を副首相に就けた。

ムヒディン前・副首相は、政府系投資会社ワン・マレーシア・デベロップメント(1MDB)に関する汚職疑惑に関して、不正関与が疑われているナジブ首相に厳しい姿勢を見せていた。ナジブ首相は内閣改造で結束を強めて、再スタートを図る。

ムヒディン氏は与党連合・国民戦線(BN)の中核政党である統一マレー国民組織(UMNO)内において支持が大きいだけに、同氏の更迭によって今後の連立与党の運営が難しくなる可能性がある。2018年の次期総選挙や党役員選挙に向けて党内の権力闘争が拡大すると見られ、同国の政治情勢から目が離せない状況が続く。

◆8月の主要指標:マレーシア・タイ・インドネシア・フィリピン・インドでGDP公表

8月は、マレーシア(13日)・タイ(17日)・インドネシア(5日)・フィリピン(27日)・インド(31日)で2015年4-6月期の国内総生産(GDP)が公表される。

マレーシアは原油安やGST導入前の駆け込み需要の反動の影響、タイは10-12月に底入れした景気の回復傾向が続くか、またインドは安定したインフレ率が続く中で消費が堅調を維持するかに注目したい。

当研究所では、マレーシアが前年同期比+4.4%、タイが同+3.3%、インドネシアが同+4.6%、フィリピンが同+5.6%、インドが同+7.3%を予想する(6月19日時点の見通し)。

新興国経済指標カレンダー

(1)ラマダン(断食月)は、閏月による補正を行わないヒジュラ暦の9月に当たるため、毎年11日ほど到来が早まる。日の出から日没まで

斉藤誠
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員

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