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(写真=PIXTA)


研究員の眼

最近、クラウドファンディング(CF)という言葉をよく聞く。CFとは、インターネットを介して不特定多数の個人から資金を集めることだ。起案者は新しい製品開発やイベントのアイデアを出し、それに賛同する支援者が資金を提供、設定した募集期間内に目標金額を調達できればプロジェクトが成立する。

国内には40余りのCFサイトがあり、起案者は自らの企画にマッチするプラットフォームを選択し、プロジェクト成立時に通常10~20%程度の手数料を成功報酬として支払うのだ。

CFは起業家の事業資金の確保やNPOのファンドレイジング、地域振興や地域課題解決のためのプロジェクト遂行、被災地復興の支援活動などに活用されている。

CFは支援者へのリターンにより、寄付型(リターンなし)、投資型(金銭的なリターン)、購入型(金銭以外の物品やサービスのリターン)に分類されるが、今年5月からは金融商品取引法が改正され、出資と引き換えに未上場株を提供する「株式型」も解禁されている。

アメリカのCFサービスの市場規模は、2014年で1兆4千億円にのぼると言われる。2011年に導入されたばかりの日本では、2015年6月現在で累計支援額は33億円程度だが、その金額は年々急拡大している。

日本で最初に立ち上がったCFサービスで、現在、最大規模の『READY FOR』では、これまで2,519のプロジェクトで9万1千人から約14億円の支援金を調達している。

最近、地方創生が重要な政策目標に掲げられているが、その実現手段としての「ふるさと納税」は、地方自治体が行う一種の購入型CFと言える。ご当地の特産品などが人気を呼び、2013年は142億円の寄附があった。

東京都墨田区では、2016年度に開館予定の『すみだ北斎美術館』の建設費の一部をCFによる「ふるさと納税」の寄附で捻出し、美術館や地元への親しみを創出しようとしている。

CFの特徴は起案者と支援者の間に「共感」が生まれることにある。単なる商取引ではなく、お互いの"志"を確認したところで「共感」が生まれ、ファンディングが成立するからだ。そこでは起案者と支援者が相互理解を深めるためのコミュニケーションが極めて重要になる。

現代社会は人と人とのつながりが希薄化し、コミュニティの衰退が進み、様々な社会的課題を解決するためには「社会の紐帯」をつくることが不可欠だ。

CFは課題解決のためのプロジェクトの実現のプロセスを通じて人々のつながりも醸成する。「共感」に基づく"志金"集めるCF(Crowd Funding)は、「社会の紐帯」つくるCF(Community Founding)の仕組みでもあるのだ。

土堤内 昭雄
ニッセイ基礎研究所 社会研究部 主任研究員

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