不動産業界の「パンドラの箱」を開けることになるか?

今回のニュースを元に、原点に立ち返って考えてみたいことがある。一部報道に誤りがあったおかげで、「不動産って、ネットで個人間が取引できるんだ」と感じた方も少なくないだろう。新サービスのスキームは、そうはならないことは前述の通りだが、「不動産も個人間の取引でいいんじゃないか」または「不動産の取引で仲介会社は本当に必要か」という問題意識は持ち続けてよいと思う。

この点について住宅ジャーナリストの榊 淳司氏は、次のように語っている。

「中古マンションは、ある程度、品質が安定した物件が多いので、そういう物件の取引にいちいち仲介業者はいらないのではないかとも思います。<中略> マンションだったら10年間、何の事故もありませんと言えば、後は住戸内の話だけです。設備の話だけなので、別に個人間で取引してもいいのではないか」

新サービスが普及した暁には、ソニー不動産は売主から「プラットフォームを提供してもらうだけで結構。あとは個人間でうまくと売買契約はやるから御社とは媒介契約は結ばなくてよい」と言われる日がくるかもしれない。もちろん、サービスの利用規約等でそうならない「縛り」を入れると思うが、縛りを入れないと続かないようなサービスは、どこかでパッシング(回避)される可能性がある。

不動産業界の「パンドラの箱」とは、「そもそも不動産会社って、個人間の取引の間に入るだけであれば、いらないんじゃないの」という認識が、一般の人々の間でどんどん広がっていくことだろう。大手の不動産会社に依頼するメリットは何、ソニー不動産だと何がどう違うの、街の不動産屋さんの良さは何?と疑問を持つ人が増えていく。どの不動産会社であろうと、問われることは一緒で、提供するサービスでお客さんにお金を払ってもらえる付加価値は何か、ということだ。

仲介業者を必要とする人もいれば、いなくてもよい人もいるだろう。必ず不動産取引に仲介業者が入る必要はない。商慣習も見直していくべきであると考える。こうした規制や商慣習がなくなった場合、当然ながら不動産仲介業者の淘汰や合従連合が進むだろう。

また、仲介手数料も宅建業法の手数料の規定、料率に縛られるのではなく、原則として自由化をすべきである。手数料は定額でも、1%でも、10%でもよいのではないか。他業界では当たり前のことだが、手数料が高くても安くても、それに見合ったサービスが提供できればよい。

不動産会社は、お客さんに提供できる価値ってなんですか、その価値にお客さんはいくらお金を払ってもらえますか、という課題に事業を通じて答えが出せればよい。

坂口誠二(さかぐち・せいじ)
住まいと暮らしの実益情報メディア「 storie 」編集長

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