消費低迷の要因とインバウンド消費のインパクト

◆低迷を脱せない個人消費

個人消費は駆け込み需要の反動を主因として消費税率引き上げ後に急速に落ち込んだ後、反動の影響が和らぐ中でいったん持ち直しつつあったが、2015年度入り後は再び弱い動きとなっている。

GDP統計の実質民間最終消費支出は、2014年4-6月期に前期比▲5.0%と急速に落ち込んだ後、3四半期連続で増加したが、その間の伸びは1%に過ぎなかった。

2015年4-6月期に前期比▲0.8%と大きく落ち込んだことで増税直後の最悪期(2014年4-6月期)をわずか0.2%上回る水準に逆戻りし、消費増税前の駆け込み需要が本格化する前の2013年10-12月期と比べると▲2.8%も低い水準となった。2015年4-6月期の落ち込みは特に大きかったが、消費増税後の個人消費は1年以上にわたって低迷が続いていると捉えることができるだろう。

消費増税前後の実質民間最終消費支出の動き

◆原油安の恩恵が家計に波及せず

2015年4-6月期の個人消費の弱さの一因としては、台風上陸や長雨などの天候不順の影響も挙げられるが、それ以上に大きいのは原油価格下落の恩恵が家計に十分に及んでいないことである。

原油価格(ドバイ)は2014年夏頃の1バレル=100ドル台から足もとでは50ドル程度とピーク時の半値以下まで下落している。原油安は交易条件の改善を通じて海外からの所得流入をもたらしており、GDP統計の交易利得は2014年10-12月期からの3四半期で8.2兆円の大幅改善となった。

原油安の恩恵が家計に及ぶルートは、1原材料価格の低下に伴う企業収益の改善が雇用、賃金の増加につながること、2ガソリン、電気代などのエネルギー価格を中心に消費者物価が低下し実質購買力を押し上げること、の2つである。

しかし、原油価格が本格的に下落し始めた2014年10-12月期から2015年4-6月期までの実質雇用者報酬(季節調整値)は7,651億円の増加にとどまっている。この間、名目雇用者報酬は7,502億円増加したが、物価低下による実質購買力の上昇はほとんど見られない。

消費税率引き上げの影響一巡によって消費者物価上昇率は2015年度に入り大きく低下したが、食料品を中心に値上げの動きが加速していること、原油価格下落の影響が遅れて反映される電気代、ガソリン代は現時点では値下げ幅が小さいことなどから、消費税の影響を除いた物価上昇率は下げ渋っているためだ(*1)。

原油安の恩恵が家計に波及せず

名目雇用者報酬の伸びも緩やかにとどまっている。4-6月期の名目雇用者報酬が1-3月期の前年比1.4%から同0.8%へと伸び率が鈍化したのは、夏のボーナスの支給時期が7月以降に後ずれしたことが影響している可能性があるが、ボーナス以外の賃金の伸びもそれほど高まっていない。

4-6月期の毎月勤労統計の定期給与(所定内給与+所定外給与)は前年比0.3%(1-3月期:同0.1%)にとどまった。2015年度の春闘賃上げ率が前年度を上回ったことを反映し所定内給与は2015年度に入ってから伸びが若干高まっているが、鉱工業生産の低迷などから所定外給与が減少に転じたことが賃金の伸びを押し下げている。

現金給与総額(一人当たり)の推移

厚生労働省が7/28に公表した「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」によれば、2015年度の賃上げ率は2.38%となり、2014年度を0.19ポイント上回った。ただし、賃上げ率には1.6~1.8%程度とみられる定期昇給分が含まれているため、ベースアップ部分は1%以下と考えられる。

また、雇用の非正規化に歯止めがかかっていないため、正社員の賃金が上がったとしても賃金水準の低い非正規雇用の割合が高まることにより、労働者一人当たりの平均賃金は下がりやすくなっている。

実際、2014年度の春闘賃上げ率は前年度から0.38ポイント改善の2.19%となったが、2014年度の毎月勤労統計の所定内給与は前年比▲0.2%と2013年度の同▲0.9%からは改善したものの、マイナス圏を脱するまでには至らなかった。2015年4-6月期の所定内給与は前年比0.3%の増加となっており、2015年度は10年ぶりに所定内給与の伸びがプラスとなる可能性が高いが、伸び率は1%を大きく下回ることが見込まれる。

また、すでに発表されている各機関の夏のボーナス調査はいずれも前年よりも増加するとの結果となっているが、増加率はいずれも2014年度に比べて大きく鈍化している。さらに、これらの調査はどちらかといえば大企業が中心となっており、伸び率が高めに出る傾向があることには注意が必要だ。

たとえば、2014年夏のボーナス調査では日本経団連が前年比7.19%、日本経済新聞社が同8.48%となっていたが、毎月勤労統計の結果は前年比2.7%とこれらを大きく下回る伸びとなり、2014年冬も同様の結果であった。中小企業を多く含みカバレッジが広い毎月勤労統計ベースの2015年夏のボーナスは小幅な増加にとどまる可能性が高い。

ボーナスの伸びは2014年夏がピーク

7-9月期以降は消費者物価上昇率がマイナスとなることで実質購買力が押し上げられるが、名目賃金の伸び悩みが続けば、個人消費の回復がさらに遅れる恐れがあるだろう。