実質成長率は2015年度1.1%、2016年度1.8%を予想
◆当面は景気の下振れリスクが高い
先行きの日本経済を見通す上で明るい材料は、原油価格下落に伴う輸入物価の低下により海外からの所得流入が続いていることである。GDP統計の交易利得は2015年1-3月期の5.2兆円に続き、4-6月期も2.1兆円の改善となった。
4-6月期は海外からの所得流入が続く中、国内民需は低調に終わったが、7-9月期は消費者物価上昇率がマイナスに転じる可能性が高く、このことが家計の実質購買力を押し上げ、個人消費を下支えすることが期待される。
また、交易条件の改善が好調な企業業績をさらに押し上げ、設備投資の回復を後押しするだろう。一方、輸出は7-9月期には前期比で増加に転じるものの海外経済の減速が続くことから持ち直しのペースは緩やかにとどまることが見込まれる。
民間消費、設備投資が増加に転じることから2015年7-9月期は前期比年率1.8%とプラス成長に復帰し、その後もプラス成長が続くだろう。実質GDP成長率は2015年度が1.1%と2014年度のマイナス成長(▲0.9%)の後としては低成長にとどまるが、2016年度は2017年4月に予定されている消費税率引き上げ(8%→10%)前の駆け込み需要によって成長率が押し上げられることから、1.8%と高めの成長になると予想する。
ただし、足もとの景気は下振れリスクが高い。景気との連動性が高い鉱工業生産は2015年4-6月期に前期比▲1.4%と3四半期ぶりの減産となった後、7月が前月比0.5%、8月が同2.7%の増産計画となっているが、生産の実績値が計画から下振れる傾向があることや、在庫調整圧力が依然として高いことを踏まえれば、7-9月期の生産が実際に増加に転じるかは不確実性が高い。
特に懸念されるのは、在庫の積み上がりが続いていることである。鉱工業指数の在庫循環図を確認すると、2014年4-6月期に「在庫積み増し局面」から「在庫積み上がり局面」に移行した後、5四半期連続して同じ局面に位置している。
1997年度の消費増税時と異なり、2014年度の増税時には企業は比較的早い段階で生産調整に踏み切ったが、最終需要が想定以上に弱いことから増税から1年以上が経過しても在庫の積み上がりに歯止めがかかっていない。在庫調整が進展することにより生産の回復が本格化するまでには時間がかかりそうだ。
7/24に開催された景気動向指数研究会で、2012年3月が景気の山、2012年11月が景気の谷と確定したが、景気動向指数のCI一致指数は2012年11月の101.8(2010年=100)から消費税率引き上げ直前の2014年3月に116.6まで上昇した後、直近の2015年6月には112.0まで低下している。
鉱工業生産を中心とした経済指標の今後数ヵ月の動き次第では、消費税率引き上げをきっかけとして1年以上にわたって景気後退が続いていると事後的に認定される可能性も否定できない。