◆物価の見通し
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は2013年6月に前年比でプラスに転じた後、消費税率引き上げ分を若干上回る価格転嫁が見られたこともあり2014年4月には前年比1.5%(消費税の影響を除くベース)まで伸びを高めた。
しかし、その後は原油価格下落に伴うエネルギー価格の上昇率低下、消費税率引き上げによる景気減速の影響などから鈍化傾向が続き、2015年入り後はゼロ近傍の動きが続いている。
燃料費調整が市場価格に遅れて反映されるガス代、電気代はそれぞれ5月、6月にようやく前年比で下落に転じたが、下落幅は今後さらに拡大することが見込まれる。
コアCPI上昇率に対するエネルギーの寄与度は2015年4-6月期の▲0.6%から7-9月期には▲1%近くまで拡大する可能性が高い。コアCPI上昇率は2015年7月に2年3ヵ月ぶりにマイナスとなった後、当面はマイナス圏の推移が続くことが予想される。
一方、物価上昇がある程度継続してきたこともあり、かつてに比べて企業の値上げに対する抵抗感は小さくなっている。実際、円安による原材料価格の上昇に対応した価格転嫁は幅広い品目で行われている。足もとのコアCPI上昇率はほぼゼロ%だが、品目数でみれば上昇品目数が6割を超え下落品目数を大きく上回っており、基調的な物価上昇圧力の強さを示している。
また、原油価格下落の効果もあって先行きは潜在成長率を上回る成長が続くため、需給面からの物価押し上げ圧力も徐々に高まっていくことが見込まれる。コアCPI上昇率は2015年度末までには再びプラスとなり、原油価格下落の影響が一巡する2016年度入り後には1%台まで伸びを高めるだろう。コアCPI上昇率は2015年度が前年比0.1%、2016年度が同1.3%と予想する。
(*1)消費者物価上昇率(総合)の前年比は2015年1-3月期の前年比2.3%から4-6月期は同0.5%へ大きく低下したが、こ
れは消費税率引き上げの影響一巡によるもので、前期比では横ばい圏の動きが続いている。
(*2)ただし、調査時期によって調査対象店舗数、品目数が異なっている。
(*3)GDP統計では外国人による日本国内での消費はサービスの輸出に計上される。
斎藤太郎
ニッセイ基礎研究所 経済研究部
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