◆設備投資が景気回復の主役へ

景気の下振れリスクが高い中で、底固い動きが期待できるのが設備投資だ。

2015年4-6月期の設備投資は前期比▲0.1%と3四半期ぶりの減少となったが、1-3月期が同2.8%の高い伸びとなった反動もあること、日銀短観、日本政策投資銀行などの設備投資計画が強めであること、先行指標の機械受注(船舶・電力を除く)が4-6月期に前期比2.9%と4四半期連続で増加した後、7-9月期も同0.3%と増加する見通しであること、などからすれば、好調な企業業績を背景とした設備投資の回復基調は維持されていると判断される。

日本政策投資銀行の設備投資計画調査によれば、2015年度の国内設備投資計画は前年比13.9%と2014年度実績の前年比6.3%から伸びを高める計画となっている。

製造業(2014年度:前年比3.7%→2015年度:同24.2%)、非製造業(2014年度:前年比7.5%→2015年度:同8.7%)ともに前年度を上回る伸びとなっているが、円安を主因とした好調な企業業績を背景に製造業が特に高い伸びとなっている。

設備投資の投資動機を見ると、更新投資に当たる「維持・補修」の割合が低下する一方、低下傾向が続いてきた「能力増強」の割合が2013、2014年度と2年連続で上昇した。2015年度計画では「能力増強」の割合が若干低下しているが、計画ベースで比較すると前年度よりも上昇している。

また、企業はこれまで国内よりも海外投資を優先する姿勢を強めてきたが、大幅な円安の進展を受けて2014年度は海外投資比率の上昇に歯止めがかかる形となった。国内回帰が進んでいると判断するのは尚早だが、これまでに比べると国内の設備投資に前向きな姿勢が出てきたことが窺える。個人消費の本格回復が当面見込めない中で、設備投資が景気回復の主役となることが期待される。

設備投資動機割合

◆経常収支の見通し

東日本大震災以来、赤字が続いていた国際収支ベースの貿易収支(季節調整済・年率換算値)は、原油価格急落に伴う輸入金額の落ち込みを主因として2015年1-3月期には0.3兆円と4年ぶりの黒字となったが、4-6月期は▲1.0兆円と小幅ながら再び赤字となった。

原油価格(ドバイ)は2015年1月の40ドル台半ばを底に一時60ドル台まで上昇したが、OPECの増産、生産性向上に伴うシェールオイルの生産高止まりによる需給の悪化などから7月に入り再び下落し、足もとでは50ドル程度となっている。

先行きの原油価格は徐々に持ち直すと想定しているが、世界経済の回復ペースが緩やかにとどまることや、イラン産原油の輸出再開が見込まれることなどから、上値の重い展開が続くだろう。輸入価格上昇によって貿易収支が大きく悪化することは避けられそうだ。

一方、輸出は生産拠点の海外移転によって海外経済の成長や円安による恩恵を受けにくいという構造要因に加え、循環的にも海外経済の回復力が弱いことから、先行きも高い伸びは期待できないだろう。

貿易収支は原油価格下落による輸入価格の低下を主因として黒字化する局面はあるものの、黒字が定着するまでには至らないだろう。2016年度に入ると2017年4月からの消費税率引き上げを控えた駆け込み需要から輸入の伸びが高まることにより収支が悪化し、再び赤字基調となる可能性が高い。

一方、多額の対外純資産を背景に大幅な黒字を続けている第一次所得収支は円安基調が続くこともあり、予測期間を通じて20兆円台の黒字が続くことが見込まれる。また、サービス収支は全体では赤字が続いているが、訪日外国人旅行者数の急増から旅行収支は大幅に改善している。

2014年度の旅行収支は2,551億円と現行統計が存在する1996年度以降では初の黒字となったが、訪日外国人旅行者数の増加ペースは2015年度に入り加速しているため、旅行収支の黒字幅はさらに拡大する可能性が高い。

経常収支は2013年度後半には赤字となったが、2014年度入り後に黒字に転換した後、原油価格下落に伴う貿易収支の改善や円安を背景とした第一次所得収支黒字の拡大などから2015年4-6月期には黒字幅が16.8兆円まで拡大した。

経常収支は2014年度の7.9兆円(名目GDP比1.6%)から、2015年度に17.1兆円(同3.4%)と大きく拡大した後、2016年度は貿易収支の悪化を主因として14.4兆円(同2.8%)と黒字幅が縮小すると予想する。

経常収支の予測