年内は需給悪化も、久しぶりに割安感
◆年内は米利上げとクジラの逆噴射で需給悪化
先後に今後の日経平均の見通しを整理しよう。前述したとおり日本企業の業績は堅調だ。しかし、周知の通り米国の利上げが間近に迫っているようで、FOMCが利上げ開始を決定すればリスクマネーの収縮にともなって株価は少なからず調整するだろう。実際、過去に米国が利上げを開始した後、米国の株価が下落し、日本株も少なからず影響を受けた。
もうひとつ重要なイベントとして日本郵政・ゆうちょ銀行・かんぽ生命(郵政3社)の新規上場が挙げられる。郵政3社は11月4日に東証1部に上場する見通しで、通常なら12月末にTOPIXに組み入れられる。すると、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に限らず、TOPIXをベンチマークとして日本株で運用する機関投資家の多くは、郵政3社の株式を買うためにトヨタや三菱UFJフィナンシャル・グループなどのTOPIX構成銘柄に換金売りを出さざるを得ない。
いわば「クジラの逆噴射」でTOPIXや日経平均には下方圧力がかかる。こうした需給悪化から現在15.6倍のPER(株価収益率)が年末時点では15倍程度まで低下し、企業業績の15%~20%増益が見込まれるとしても日経平均は2万円前後となろう。
◆2~3年以内に2万4,000円も視野に
来年以降はどうか。カギは企業業績がどこまで伸びるかだが、アベノミクス開始以降のような大幅な円安進行は期待しづらい。前述のように中国経済の先行き不安も顕在化してきた。それでも米国が(ペースはゆっくりでも)順調に利上げを続けられるくらいの景気回復を実現できれば、日本企業にとっては輸出数量の増加と日米金融政策の違いに起因する緩やかな円安は期待できよう。大した根拠はないが、ざっくりと5%程度の増益は望めるのではないか。
もう1点、昨年から我が国で大きなテーマとなっている「株主還元」「ガバナンス強化」の流れはしばらく続くと予想される。そうであれば、足元で10%弱である日本企業のROEが2~3年後に12%くらいまで高まる可能性は十分にあろう。
単純計算ではROEが2割改善すれば株価も2割上昇する。つまり、今の日経平均を2万円として、数年後には2万3,000円~2万5,000円が視野に入る。もっとも、これは市場心理が大幅に悪化しないことが前提だが、ROEが12%まで改善できる状況ならば、市場心理が極端に悪化する事態には陥っていないだろう。
この先の日経平均に13・14年度ほどの大幅上昇を期待するのは難しい。それでも年率7~10%程度の値上がりを見込むのはさほど無理がないと考える。足元の株価急落によって、久しぶりに日本株の割安感が高まったのではないか。
井出真吾
ニッセイ基礎研究所 経済研究部
チーフ株式ストラテジスト
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