食品の安全確立に向けた動き
中国国内でも、実際にこのような問題の構造は認識されており、法制网では、今回の「食品安全法」の改正により、より処罰が厳格化されることについては一定の評価がある。一方で、法律は「厳しい執行」がなくては機能しないことを指摘する声も挙がっており、中国政府がどの程度、本法を厳格に「執行」していくのかが、本法の効果を上げるために最も重要な点となるだろう。
ただし、中国における「食品の安全確立」に向けた動きは、静かだが確実に進展しているのも確かである。中国の法制晩報によると、中国最高人民検察院は、2014年1月から2015年6月までの1年半において、有害物質を含んだ食品を生産・販売するなど、食の安全をめぐる犯罪で起訴した人数が1万2000人を超えたことを明らかにした。
また司法の面でも、食品安全確立に向けた動きが進んでいる。これまで中国では司法の独立性が必ずしも確保されておらず、消費者の訴えに対して、裁判所が政府・企業よりの判決を下すことが多いとされていた。しかし食品安全に関しては、この「常識」は変わりつつあるようだ。近年、中国では「食品安全法」で規定される安全基準に満たない不良商品を販売した企業に対して、販売金額の10倍の賠償金の支払いを命じる判決が相次いで下されているというのである。
このように、中国では官の指導、および消費者からの訴えをうけた司法判断の両面において、従来よりも厳しい取り組みが進められているのである。
今後の中国が推進する食の安全に期待
中国の食品安全問題における最も大きな原因であった「企業のモラル・ハザード」は、(1) 政府の取締りが不十分であること、(2)司法を通じた消費者からのチェックが有効に機能してこなかったこと、が原因であったことは先に述べた。しかし、現在までに少しずつではあるが改善の兆しも見え始めている。
中国では、小規模企業も含めると全体で数多くの食品製造業・流通業が存在しており、前述の起訴された人数などは氷山の一角に過ぎないだろう。そのため今回、「食品安全法」が改正され、政府が取締りを厳しく行ったとしても、まだまだ先進国並みの食品安全の確立には長い時間がかかると想定される。
しかし、これまでに見てきたような取り組みを通じて、中国で作られた食品を中国国内そして世界中の人たちが安心して食べられることになれば、世界中の人々にとって非常に有益であることは間違いない。今後は世界各国が、このような中国の取り組みをサポートし、積極的に協力する姿勢を持つことが、世界中で安心して中国の食品を味わうためには必要になってくるだろう。(ZUU online 編集部)
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