中国食品の品質・安全について、とんでもない問題が当たり前のように報道されている。昨年7月、マクドナルド向けの上海の食品会社の偽装問題が明らかになって以降も、芋に合成樹脂を混ぜた中国産のプラスチック米、最近では米国やブラジルから密輸された後、冷凍と解凍を繰り返し腐敗したまま流通したゾンビ肉など、世界中を驚かせるニュースは少なくない。

中国政府も現状に手をこまねいているわけではなく、2009年には食品安全法を施行し、中国国内で食品の生産と加工、流通などの活動に従事する事業者に対する基準を示している。「食品安全に関する所轄官庁責任の明確化」「食品に関する国の安全基準」「問題食品のリコール制度の確立」などを規定した画期的な内容で、諸外国に比べても遜色ないものだった。

2015年4月には、さらに厳格化する方向で同法の改正が行われることが決まった。具体的には特に粉ミルクの品質管理強化、罰則の厳格化を盛り込んだ。この結果、中国の「食品安全法」は”世界一厳しい法律”といわれることとなった。

しかし、本法が施行される10月以降、中国の食品問題が急に解決するかといえば、必ずしもそうはならないという意見が多数を占める。なぜ中国では食品安全の問題解決が進まなかったのだろうか。


食品安全法改正の背景とは?

10月1日から施行される改正「食品安全法」の目的は、罰則規定の厳格化だ。罰金の額が引き上げられ、終身刑も含まれる。

しかし、前述のとおり、同法は2009年に施行された時点で、基本的な必要事項と具体的な実施手続きは規定されており、大きな不備はなかった。それでも食品安全問題が多発したのは、中国企業の「企業モラルの低さ」が大きな原因であるといえる。そしてその原因は、「政府の取締りが不十分であること」「消費者のチェックが有効に機能しなかったこと」にある。

中国では、多くの企業が国有企業として共産党の指導下にある上に、個々の監視・取締も恣意的に行われることが多いため、政府の指導は厳正に行われないケースが多かったのだ。また、消費者が企業や政府を訴える場合も、従来勝訴の見込みが従来低い場合が多かったいという、企業優位の現状がある。そのため中国では、モラル・ハザードに陥る食品企業が多く、安全問題が頻発する現状を生み出していたのである。


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