まとめ

現在、これらの先行的な指標には、既にサイクルのピークを示唆するものがみられる一方、依然として強い、あるいは方向性が不明確な指標も残っている(図表-16)。

図表-16 各指標の状況

基本的に各指標は先行性が強いため、全ての指標がピークアウトを示すまで、不動産価格は堅調に推移するとみられる。ただし、既にサイクルのピークが近い可能性があり、また、直近の株価の調整は不動産価格にも少なからず影響するものとみられる。

今回、サイクルのピーク感が強まる中、その早期把握を重視して株価などの先行性の強い指標についてみてきた。しかし、中長期の不動産投資においては、市場の短期的な変動に惑わされない観点から、先行的な指標に加え、マクロ経済統計や建設着工統計、各種のアンケートに基づく業況判断指数など、様々な指標を用いて総合的に判断する方法も有効と考えられる。

(*1)現在、国交省で商業用不動産(オフィスや商業施設など)の取引ベースの価格指数について試験運用に向けた検討を進めている。
(*2)2011年から国内初のリピートセールス法による住宅価格指数(同一物件の取引価格の変化に基づく指数(図表-1))が公表されている。実需の住宅取得がメインの指数ではあるが、オフィス等の取引価格動向にも参考になる。
(*3)増宮守「景況感はさらに改善するも海外要因を注視~不動産価格のピークは2017年までが大勢~第11回不動産市況アンケート結果」ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2015年1月29日
(*4)ファンドバブルといわれた2007年にはJ-REIT価格が大幅上昇したが、過去のJ-REIT価格の動きは、株価以上に変動性が高く、株式より収益の安定したミドルリスクミドルリターンのJ-REIT本来の商品特性を表していない。J-REITは市場創設からの年月が浅かったことから、投資家の間で十分に理解されておらず、ハイリスクな開発事業を含む不動産会社との区別が明確でなかったと考えられる。
(*5)オフィスの取引価格動向は明らかではなく、鑑定評価額(J-REITや私募ファンドなどの物件データ)に基づく価格指数があるものの、実際の取引価格動向には遅行する募集賃料に近い動きとなっている(図表-11)。
(*6)新築ビルは竣工後1年以内のビル。
(*7)増宮守「海外資金の国内不動産取得動向・2014年~投資市場の活況がリーマンショック前のピークに迫る~」ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2015年3月17日

増宮守
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 准主任研究員

【関連記事】
景況感はさらに改善するも海外要因を注視
海外資金の国内不動産取得動向・2014年
国内年金による海外不動産投資の選択肢
不動産クォータリー・レビュー2015年第2四半期~
ホテル不足とホステル・民泊拡大と規制緩和