(写真=PIXTA)
◆中国の15年上期(1-6月期)の国内総生産(GDP)は、実質で前年同期比7.0%増と14年の前年比7.4%増を0.4ポイント下回った。15年上期の特徴としては、"名実逆転"したことと、第3次産業の成長率が第2次産業より高い"3高2低"が挙げられる(下左図)。
実質成長率が7%とそれほど低くないのに、工業原料などの輸入金額が減っている背景には、原油安など商品価格下落に加えて、この両者があると思われる。
◆需要面を見ると、輸出は欧州経済の復調を受けてやや回復、消費は堅調な個人所得と住宅販売の底打ちに支えられて底堅いと思われる。投資については、製造業と不動産業では昨年より大幅に減速しそうだが、消費サービス関連は高い伸びを維持し、インフラ関連も新型都市化に伴って必要になるインフラを、景気テコ入れ策として前倒し実施すると予想している。
◆物価面では、インフレは低位に留まる一方、住宅価格は販売の持ち直しを受けて底打ちした。また、中国人民銀行は、人民元の対米国ドル為替レートの基準値の市場化と基準性を高めるため、中間値の形成メカニズムを改善すると発表した。この措置により、市場実勢と基準値の乖離がほぼ解消、基準値の透明度は飛躍的に改善した。
一方、この措置を受けて人民元が急落、この措置を実施すれば市場実勢が下落することは明白だったことから、輸出に配慮したという側面もある。但し、人民元の割高感はやや縮まった程度で、輸出への好影響は限定的だろう。
◆2015年の成長率は前年比7.0%増、2016年は同6.7%増と緩やかな成長率鈍化を予想している。最終消費は3ポイント台後半のプラス寄与、総資本形成は製造業・不動産業では低い伸びが続くもののインフラ関連・消費サービス関連では高い伸びを維持して3ポイント程度、純輸出はゼロ近辺で推移と見ている(下右図)。
なお、下方リスクとしては「株価のさらなる下落」による逆資産効果と「天津の爆発事故の深刻化」による貿易面へのマイナス効果が挙げられる。
国内総生産(GDP)
中国では15年4-6月期の国内総生産(GDP)が発表された。経済成長率は実質で前年同期比7.0%増と、1-3月期と同じ伸び率で横ばいとなった(図表-1)。但し、前期比(季節調整後)では1.7%増と1-3月期の1.4%増(改定後)を0.3ポイント上回った。当研究所で推定した年率換算では、1-3月期の5.7%増から4-6月期には7.0%増へ加速したことになる(図表-2)。
より詳細な情報が公表された15年上期(1-6月期)で見ると、経済成長率は実質で前年同期比7.0%増と、14年の前年比7.4%増を0.4ポイント下回った。15年上期の特徴としては第1に物価下落で"名実逆転"となったことが挙げられる。
国内総生産(GDP)は29兆6868億元で、前年同期比で6.5%増と、実質成長率の同7.0%増を0.5ポイント下回った。特に、工業部門は名目(時価)ベースで前年同期比1.2%増と極めて低い伸びに留まった(図表-3)。
第2の特徴としては産業構造の変化で"3高2低"が鮮明化していることが挙げられる。第2次産業は中国経済を長らく牽引してきた部門だが、今年上期も含めると5年連続で伸びが鈍化した。ところが、第3次産業は8%前後の伸びが継続、今年上期は前年より若干ながらも伸びが加速している(図表-4)。
実質成長率が7%とそれほど低くないのに、工業原料などの輸入金額が減っている背景には、原油安など商品価格下落に加えて、この"3高2低"と"名実逆転"があると思われる。