需要別の動向

◆輸出の動向

中国経済にとって大きな牽引役となる輸出は、15年1-7月期は前年同期比0.8%減となった(ドルベース、図表-5)。

輸出相手先別に見ると、米国向け輸出は同7.3%増、ASEAN向け輸出は同8.0%増と比較的堅調だったが、欧州向け輸出が同4.3%減(14年は同9.4%増)、日本向け輸出が同11.0%減(14年は同0.5%減)と大きく落ち込んでいる。なお、香港向け輸出(全体に占めるシェアが15.5%と大きい)を除いた輸出をみても同0.9%増と伸びは昨年より大きく鈍化している(図表-6)。

図5-6

〔欧州経済の復調でやや回復も、回復力は弱い〕

今後の輸出を考えると、欧州経済の復調を受けて輸出はやや回復するだろうと予想している。しかし、製造業PMIの新規輸出受注が拡大・収縮の境界線となる50%を下回る水準での低迷が続いていることから、輸出が回復する時期は後ずれしそうである(図表-7)。

また、人民元の割高感が高まっていることも輸出の足かせとなるだろう。図表-8に示した基軸通貨(ドル)に対する為替レートの変化率を見ると、人民元は小幅な下落率に留まっており、輸出競争力は弱まっている。従って、前回の経済見通し(Weeklyエコノミスト・レター2015-5-29)よりも輸出の回復力は弱いと見て、15年の輸出の伸びは前年比2%前後へと下方修正している(前回は同6%前後)。

図7-8

◆個人消費の動向

個人消費の代表指標である小売売上高は、15年1-7月期は前年同期比10.4%増と14年の同12.0%増を1.6ポイント下回った(図表-9)。

内訳を見ると(一定規模以上)、飲食、日用品類、家電類、家具類などは14年の伸びを上回ったものの、全体の4分の1を占める自動車が前年同期比4.3%増と14年の同7.7%増を大きく下回っている。また、価格要因を除いた実質の小売売上高は、原油安などを受けてインフレ率が落ちたことから、0.4ポイント程度(当研究所の推定)の小幅な低下に留まった模様である。

図9

〔15年は底堅く推移も、16年には伸びが鈍化〕

今後の消費を考えると、株価の急落で自動車販売の不振は長引きそうだが、所得の堅調な伸びと住宅販売の回復などに支えられて底堅く推移すると予想している。15年上期の全国住民(都市と農村)一人あたり可処分所得は価格要因を除いた実質で前年同期比7.6%増と、実質成長率の同7.0%増を0.6ポイント上回っており、所得は堅調な伸びを示している。

また、住宅販売(面積)は、昨年は大きく落ち込んで耐久消費財に対する需要を鈍らせたが、この1-7月期は前年同期比6.9%増とプラスに転じ、当研究所の推定では7月単月では前年同月比21.3%増となった模様である(図表-10)。

さらに、15年は腐敗汚職撲滅運動が始まって実質3年目に入る。習近平国家主席が綱紀粛正の手綱を緩めるとは考え難いものの、高額消費に対するマイナス圧力は徐々に薄れてくるだろう。実際、腐敗汚職撲滅運動が始まった13年には、贅沢の象徴とされた高級飲食が大きく落ち込んだが、大衆飲食にシフトしたこともあって、その影響は徐々に薄れてきている(図表-11)。

従って、15年は所得の堅調な伸び、住宅販売の回復、高額消費に対するマイナス圧力の緩和を受けて、消費は底堅く推移すると見ている。但し、16年になると、原油価格が緩やかに上昇すると想定していることから、インフレ率が上昇して(当研究所見通しでは15年は前年比1.5%上昇、16年は同2.2%上昇)、実質所得の伸びが鈍化、消費の伸びもやや鈍化すると予想している。

図10-11