◆投資の動向

投資の代表指標である固定資産投資(除く農家の投資)は、15年1-7月期は前年同期比11.2%増と14年の同15.7%増を4.5ポイント下回った(図表-12)。

業種別に見ると、全般的に伸びは鈍化しているが、特にシェアで3分の1を占める製造業が前年同期比9.2%増(14年は同13.5%増)、4分の1を占める不動産業が同5.3%増(14年は同11.1%増)と大きく落ち込んでいる。一方、卸小売業など消費サービス関連、水利・環境・公共施設管理業などのインフラ関連は引き続き高い伸びを示している。

図12

〔15年は大きく減速も、16年にはやや回復〕

今後の投資を考えると、15年は前年比12.3%増と大きく減速しそうだが、16年には同13.2%増とやや回復すると予想している(図表-13)。

図13

製造業に関しては、安い賃金で労働力が確保できる後発新興国への直接投資が増えてきており、伝統的な労働集約型製造業の国内投資は減速傾向が続くだろう。但し、同じ製造業でも「中国製造2025」(*1)に関連する領域では、積極的な投資が増えると期待できることから、16年には小幅に回復すると予想している。

不動産業に関しては、住宅販売が持ち直して住宅価格は底打ちしたものの、住宅の新規着工(面積)は1-7月期も前年同期比▲17.9%減とむしろ落ちており、不動産業の投資は今後さらに落ち込むと見ている。

しかし、中国人民銀行は5度に渡って基準金利を引き下げるなど金融緩和に動いており、また新型都市化に伴って不動産に対する新たな需要(商業不動産、オフィス、物流不動産、レジャー観光、高齢者向け住宅など)が生み出されることから、16年に入ると不動産業の投資も緩やかながら回復に向かうと予想している。

消費サービス関連に関しては、堅調な消費を背景に高い伸びを維持すると見ており、今年はホテル・外食産業や金融業の不振で伸びが鈍化したものの、16年にはやや回復すると予想している。

インフラ関連に関しては、今年は製造業と不動産業の2大セクターが揃って大きく減速しており、景気をテコ入れするために計画を前倒しで執行すると見て高い伸びを予想、16年はその反動で低い伸びになると予想している。

中国は様々な環境問題を抱えており、大気汚染対策、水質汚染対策、土壌汚染対策、ごみ処理能力増強など環境関連のインフラ需要が多い。また、14年3月に中国共産党・政府は「新型都市化計画(2014~2020年)(*2)」を発表、大都市と中小都市を結ぶ交通物流網などの整備が必要で、インフラ関連の潜在需要は依然として大きいと思われる。(図表-12)