経済見通し
以上の分析を元に、中国の経済成長率は15年が前年比7.0%増、16年が同6.7%増と、緩やかな成長率鈍化(ソフトランディング)を予想している。需要項目別に見ると、最終消費は3ポイント台後半のプラス寄与、総資本形成は製造業・不動産業では低い伸びが続くもののインフラ関連・消費サービス関連では高い伸びを維持して3ポイント程度のプラス寄与、純輸出はゼロ近辺と想定している(図表-18)。
また、ソフトランディングの中にも山谷はあるだろう。15年7-9月期は自動車の販売不振と不動産業の投資不振で7%を割れると見ているが、その後はインフラ関連投資が増えて10-12月期には一旦7%台を回復すると予想している。しかし、インフラ関連投資の高い伸びは長続きせず、消費者物価の上昇に伴う実質所得の低下で消費の伸びが鈍化することから、経済成長率は再び6%台後半に戻るという流れを想定している(図表-19)。
〔下方リスクについて〕
下方リスクとしては「株価のさらなる下落」と「天津の爆発事故の深刻化」が挙げられる。これまでに判明した景気指標を見る限り中国景気はそれほど悪くないものの、株価の急落と天津の爆発事故が先行きを不透明にしている。
株価は上海総合で3000を割り込んだが、早期に戻らなければ消費へのマイナスの影響がさらに増えるだろう。また、天津の爆発事故で天津港の機能不全が長引くようだと、貿易面にマイナスの影響がでてくるだろう。そして、「株価のさらなる下落」や「天津の爆発事故の深刻化」で景気が悪化すれば、人民元が再び大きく売られて、世界経済へ悪影響が及ぶ恐れもあると見ている(図表-20)。
(*1)中国政府は2015年5月19日に「中国製造2025」(国発[2015]28号)を発表し、"製造大国"から"製造強国"への転換を図る道筋を示した。なお、戦略的新興産業との対比については「"中国製造2025"と日本企業」(研究員の眼2015年4月13日)を参照。
(*2)新型都市化が生み出す投資需要は巨大で2020年までの累計で42兆元(約800兆円)に達すると試算されている(中国財政部)。スケジュールとしては2017年までが試行地域における先行実施期間となり、その成果を踏まえて2018-20年には全国展開される予定。
三尾幸吉郎
ニッセイ基礎研究所 経済研究部
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