中国本土からの旅行者数はまだ増えるのか?

◆中国本土からの出境者数の試算

中国本土からの出境者数は、10年は前年比20.4%増、11年は同22.4%増、12年は同18.4%増、13年は同18.0%増、14年は同18.7%増と高い伸びを続けている。ここ数年、中国では経済成長率が7%台に落ちてきているが、中国本土からの出境者数にはそれほど大きな打撃にはならなかったようだ(図表-11)。

中国本土からの出境者数図11

諸国・地域の事例を見ると、所得水準が高い国・地域は出境者数も多いという傾向がある。図表-12に示した一人あたりGDPと人口100人あたりの出境者数の関係を見ると、傾向線は右肩上がりとなっており、正の関係にあることが分かる。

但し、所得水準の高い国・地域では国土の広さや国際化の進展度などによりバラツキが見られる。国土が小さく国際化が進んだシンガポールでは160.2人に達している一方、国土が大きいオーストラリアでは37.6人と傾向線を大きく下回っている。

また、国際化が進んでいる米国では来訪者は多いものの、出境者数は19.4人と低位に留まっている。ちなみに、日本は13.7人に留まっている(図表-13)。

中国本土からの出境者数は1億人を超えたものの、人口が約13.6億人と多いため、100人あたりの出境者数は7.2人と傾向線より若干下に位置する(図表-12)。

今後の経済成長率が国際通貨基金(IMF)の想定するとおり6%台を維持するようだと、2020年には一人あたりGDPが1.1万ドルを超える。これを前提に中国本土からの出境者数を推計すると約2.5億人(年平均増加率14.9%)となる。過去5年の平均年率19.6%よりは伸びが鈍るとはいえ、当面は高い伸びが続きそうである。

GDP出境者数図12-13

◆訪日する旅行者数の試算

一方、中国本土からの出境者全体に占める日本のシェアはむしろ低下傾向にある(図表-13)。

出境者シェア図13

その背景には日中関係が悪化傾向にあったことがあると思われる。従って、中国本土からの出境者数が2020年に約2.5億人になっても、日中関係がさらに悪化すれば、日本のシェアはさらに低下して、訪日する旅行者数は増えないことも有り得る(悲観ケース)。

しかし、ここもとの日中関係は改善しつつあることから、現在のシェア(約2%)を維持できると見て、これを標準ケースとしている。この場合の旅行者数は500万人程度となる。また、日中関係がさらに改善して韓国並みのシェア(約4%)にアップするとすれば、中国本土からの旅行者数は1000万人程度に達することになる(楽観ケース)。