消費者物価指数(7月)
7月の消費者物価上昇率(前年同月比、以下CPI上昇率)は、イスラム教の断食明け大祭の消費需要の増加を受けてマレーシア・インドネシアで上昇圧力が高まった。また原油先物価格が再び下落に転じており、その他の国・地域ではインフレ期待が後退し、引き続き低めの伸びとなった(図表5)。
インドネシアは同+7.3%と、断食明け大祭の消費需要や国内の燃料価格の値上げを受けて高止まりした。マレーシアは同+3.2%と、断食明け大祭の消費需要やリンギ安の加速で輸入インフレの動きが見られ、5ヶ月連続で上昇した。
一方、インドは前年同月比+3.8%と、年明けから続いた5%前後の伸び率から低下した。6月の南西モンスーンの降雨が好調だったことやコメの最低支持価格(MSP)の引き上げ幅が前年度と同水準の3.7%に抑えられたことから、食料品価格を中心にインフレ圧力が後退したと見られる。フィリピンは同+0.8%と、コメ備蓄量の増加や国際商品市況の下落を受けて食料品価格を中心に前月から0.4%低下した。
8月は、韓国・タイ・インドネシア・フィリピン・インドの中央銀行で金融政策会合が開かれた。全ての会合で政策金利は据え置かれた。
インドでは、足元のインフレ率の低位安定や南西モンスーンの雨不足による先行きのインフレリスクが後退していることから利下げ観測が高まっていたが、様子見となった。9月下旬の次回会合では、カリフ期(6-9月)の降雨量が明らかになるため、利下げの是非が判断される可能性が高い。
金融市場(8月)
8月のアジア新興国・地域の株価は、全ての国・地域で5%を上回る下落幅となった(図表6)。
月上旬は原油安や米国の利上げ観測の高まりなどアジア新興国株は軟調な推移であったが、中旬以降は中国で人民元の切り下げや天津港の爆発事故などが国際金融市場の混乱を引き起こし、中国株の急落が世界同時株安へと波及したが、27日には中国が利下げと預金準備率の引き下げを発表してリスク回避の動きは和らいだ。また中国の経済指標悪化も中国との貿易関係が深いアジア新興国の株価下落に繋がった。
国別に見ると、マレーシアは原油の純輸出国であることや国内の政治問題、タイはバンコク市内で2日連続の爆弾テロが起きたこと、台湾は半導体大手の企業決算が減益となったことが株価下落に繋がった。
為替(対ドル)は、米国の利上げ観測の高まるなか、11-13日における人民元切下げが市場に混乱を引き起こした。月後半には米利上げ観測が後退したが、アジア新興国からリスクマネーの流出が続き、全ての国・地域で通貨が下落した(図表7)。
国別に見ると、マレーシアは前月比▲8.9%と、月を通じて原油安が続いたことから下落し、アジア通貨危機を受けて導入した固定相場制の水準(1ドル=3.8リンギ)を割った。このほか、インドネシアは経常赤字と財政赤字の「双子の赤字」と、ファンダメンタルズが脆弱であることも通貨下落に繋がった。