タブレットの売れ行きは?

かつてキンドルFireは、アンドロイド・タブレットで最高の売り上げを誇っていた。小型タブレット販売の先鞭をつけた同社だったが、小型端末のヒットを見るや、既存の他社が一斉に参入してきた。現在、タブレット市場におけるアマゾンの衰退ぶりは著しい。IT専門調査会社IDCの試算によると、2014年第4四半期の同社の売り上げ台数は70%減の170万台にまで落ち込んだと推測される。アマゾンはこの数字に異議を唱えたが、当然ながら反論を裏付けるデータの提供には応じなかった。アマゾンはIDC発表の2015年第2四半期売上台数トップ5社に入っていない。ちなみに中国のファーウェイ(華為)、韓国のLGがともに160万台で4位タイにランキングされている。

WSJによれば、アマゾンの製品構成は電子書籍リーダーやタブレット端末などの低価格品にひどく偏っている。それは正しい戦略とも言えるが、低価格製品マーケットの競争はきわめて熾烈だ。一方、iPadはアメリカの上位機種タブレット市場(価格200ドル以上)で76%のシェアを占めている。アマゾンは低価格タブレットに開発資源を注ぐかたわら、人工知能スピーカーEchoのような新しい製品カテゴリーにも注力していくことになるだろう。


撤退が正しい決断である理由

戦略上、アマゾンのハードウェアはつねにショッピング・ポータル、有料会員向けサービスであるアマゾン・プライムへの入口としての機能を持っていた。ハードウェアを原価で売り、客がその後デジタル・コンテンツや通販を利用することで利益を得る、というのが同社の長年の戦略だった。アマゾンらしからぬFire Phoneの高価格設定には、スマホ販売そのもので(そして販売後も続けて)利益を得ようという同社の狙いがあったのだ。

アマゾンのハードウェアの強みが、販売後もさまざまな商品を売り続けることができるという点にあることを考えれば、自社のスマートフォンやタブレットづくりに開発資源をつぎ込むのは明らかに賢いやりかたではない。客は手持ちの端末にアマゾンのアプリをダウンロードして使っているのだから、他社の端末がすでにアマゾンのポータルサイトとして機能してくれているのだ。それよりも、真のビジネスチャンスが眠っているのは、ワンプッシュで注文ができる5ドルのボタン型端末やEchoなどの新カテゴリーの製品、客の注文を一括して受けられる新タイプのマシンだ。

そんな新しいタイプのハードウェア製品こそが、本当の意味で他社と差をつけ、コアなeコマース・ビジネスを支えてくれるはずだ。それにベゾスの「モノマネ」嫌いは有名な話ではないか。

エヴァン・ニュー(提供: The Motley Fool

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