米サンフランシスコの資産運用管理会社マルカート・キャピタル・マネージメントが、2億ポンド(365億円)相当のインターコンチネンタルホテルズグループ(IHG)保有株をすべて処分した。英Skyニュースが9月6日、報じた。


FT紙が報じた合併話をIHGが否定したのを受けての決断

報道によると、マルカートは全体の4%を保有していたクラウンプラザやホリデーイン(共にIHGの傘下)の株のうち、大半あるいはすべてを数週間前に売却。売却理由についてのコメントは発表されていないが、マルカート内部関係者の話を総合すると、今年7月下旬に英フィナンシャル・タイムズ紙が報じたスターウッドホテル&リゾートとの合併話を、IHGが全面的に否定したのを受けての決断のようだ。

世界100カ国で5000軒以上ものホテルを経営、時価総額56億ポンドを超える世界最大手のホテルグループIHG。その株主としてマルカートが受けた経済的な恩恵は、庶民の想像をはるかに超えるものだったはずだ。マルカートはなぜIHGの株主の座から退く決断を下したのだろうか?

マルカートの「大規模ホテル同士の合併は、ビジネスを成長させ、国際的にホテル業界を再構成するという意味で、プラス要素をふんだんに秘めている」と主張と、あくまでも独自の戦略を貫こうとするIHGの経営方針のギャップが、年月を経て浮き彫りになった結果と言えるかもしれない。


マルカート「IHGは過酷なホテル競争に生き残る術を知らない」

昨年のSkyの報道によると、IHGが米ウィンダムホテルグループから合併話を持ちかけられた際、マルカートは「長期的に株主に恩恵をもたらす、ユニークなチャンス」と、手放しで歓迎する姿勢であったにも関わらず、両ホテルの話し合いは合意にいたらなかった。その結果、マルカート側は「IHGは現在の過酷なホテル競争に生き残る術を知らないのではないか?」とIHGの経営方針に疑惑を抱くようになったと思われる。

ウィンダムとの合併を再び要求するマルカートに対しIHGは11月、「ウィンダムとの2度にわたる話し合いとアナリシスの結果、質の高い成長と好業績に向け、引き続き単独で現戦略を遂行するのがベストであるという結論に到った」と反論。


IHG香港を売却する一方でキンプトンを買収

その言葉を裏付けるかのように、リチャード・ソロモンズ最高経営責任者(CEO)は、ホテルの一経営者としての方針よりもホテルマネージメントのビジネスモデルという発想に転換。フラッグシップホテルの売却から得た実質投資収益で株主を喜ばせ、6月にはIHG香港を10億ドル(1193億円)で売却。その一方で、世界最大手のインディペンデントブティックホテル、キンプトンを2億 7500万ドル(328億円)で買収するなど、実に精力的な活動を見せている。

同グループは、これでグループの経営方針が間違っていなかったと株主に証明したことになり、来年2月の最終決済ではそれがより確実なものになると述べている。

マルカートがIHGに再投資する可能性については、9月6日の時点では不明である。しかし、マルカート関係者は「今後、マルカートが英企業に投資することはあり得ない」と否定的だ。合併吸収でビジネスを成長させたいマルカートと、売却・買収でビジネスを成長させたいIHG。両者間の溝を埋めるのは至難の業というところだろうか。

なお今回の決別に関しては、IHG、マルカートともにいまだ固く口を閉ざしている。(ZUU online 編集部)

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