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(写真=Thinkstock/Getty Images)

8月21日、電子部品商社の黒田電気<7517>が急きょ臨時株主総会を開催した。「村上ファンド」で一世を風靡した村上世彰氏の娘が株主提案した、同関係者の社外取締役就任、余剰資金の活用、さらに売上高1兆円を目指して業界再編に乗り出すべきとの要求にどのように対応するかが議題となった。結局、議決権の約6割が反対に回り、「新生」村上ファンドはその初戦であえなく敗退した。このほかにも、今年前半には大塚家具の創業家親娘が同社の経営権を巡って骨肉の争いを演じ、お隣の韓国でもロッテグループが同様の騒動で大きく揺れた。


企業は誰のものか?

折しも今年は2月に金融庁が機関投資家向けの行動原則、いわゆる「日本版スチュワードシップ・コード」を公表、6月には東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コード(企業統治原則)の適用を始め、投資家と企業の双方が、会社のあり方を改めて見直す機運が高まっている。

そのさなかで冒頭の出来事は、「企業は誰のものか?」との問いを改めて投げかけた。これは企業のIR(投資家向け広報)担当者にとっても重要な問題だ。ただ、答えそのものはいたって簡単。企業は株主のものである。株式会社の仕組みと法的成り立ちを考えれば、その主権が株主にあるのは明らかだ。にもかかわらずこの議論が取りざたされる背景の一つには、いわゆる「ハゲタカ・ファンド」の存在がある。目先の利益のみを目的とし、投資先がその後どうなろうとおかまいなしという超短期利益主義の機関投資家だが、理屈のうえでは彼らもまた株主である。では会社は株主のいいなりにならなければいけないのか? それは否である。

問いの本質は、企業が「誰のために」存在するかにある。事業を始めると様々なステークホルダー(利害関係者)が生まれる。顧客や従業員、取引先はもちろん、メインバンクや政府までもが含まれ、株主はその一員に過ぎない。企業が「社会の公器」とされるゆえんだ。そして、いままさに企業の社会の公器としての品格が問われているように思えてならない。

企業の理想的な姿は、従業員が経営者の優れた戦略に基づいて魅力ある製品・サービスを生み出し、納入業者はこれに適したモノ・サービスを提供、販売業者が積極的に流通させ、これら製品・サービスに価値を見いだした顧客が喜んで対価を支払う、という循環だ。この結果生じた利益をステークホルダーに的確に割り振れば、従業員や取引先の士気、ひいては企業価値が上がり、株価も上昇するポジティブ・スパイラルに入る。そうなればステークホルダー全てが満足を得られることになる。


重要さを増すIR担当者の姿勢

IR担当者は、この理想的な姿の実現に向けて大きな役割を果たせる立場にある。投資家と向き合うのが仕事と考えるIR関係者も少なくないが、最も重要なのは自社のファンを増やすことだ。既存の投資家に限らず、自社のステークホルダーも将来の株主となりうる貴重な存在としてみるべきである。

取引先が株式を持てば自社との取引へのコミットメントも強まるだろう。個人も安定(=長期)投資家としてますます重要になってくる。幸い、NISA(少額投資非課税制度)の普及に伴って株式投資に興味を示す個人が急増したことで、証券会社の旗艦店などで複数の上場企業を招いて説明会を催す動きも広がっている。主催者側に働きかけ、このような場で積極的にアピールすれば、本業の顧客拡大にもつながる可能性がある。NISAの投資先として人気の高い投資信託の運用会社に自社株を売り込む努力も必要だろう。

その際重要なのは、自社の紹介や業績説明にとどまらず、経営者の信条や戦略を熱意を持って伝えることだ。これにはハゲタカ・ファンドの機先を制する効果もある。そのためにもIRの担当者・組織は経営トップの直属としてその考え・戦略を常に把握するとともに、市場の声をフィードバックすることが望ましい。

市場知名度の高くない中堅企業では、このような姿勢がより重要になる。IR活動に人材を割く余裕がなければ経営トップがその役を買って出るべきだ。既存株主だけでなく潜在投資家に広く接することで、自社の課題が浮き彫りになり、経営へのヒントが得られることも少なくない。市場に耳を貸す企業として評価されれば、将来の資金調達の助けになるかも知れない。日々の経営に追われるばかりではトップとしての責務は果たせない。

今年はコーポレート・ガバナンス元年といわれる。企業経営者には、自社の体制を改めて精査し、それを踏まえた新たなIR戦略を練る絶好の機会ととらえて欲しいものである。(ZUU online 編集部)

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