日経平均株価は今年6月24日の高値2万952円、7月21日2万850円、8月11日2万946円で、それぞれ上値を抑えられた。特に8月11日の高値を付けたときは、多くの投資家がこの上値抵抗線を突破できるかどうか固唾をのんで見守っていたが、またもやこの水準で頭を抑えられることとなった。その後、下落に転じた株価は25日移動平均線、75日移動平均線、そして2万円の大台を割り込むという、先高期待を裏切る展開となった。下落率は11営業日で約15%に達したが、その後の3営業日で8%の急反発を見せるなど非常に荒っぽい変動を見せている。それにしても、なぜ、これほどまでに日経平均の値動きは荒いのか。その背景を探ってみよう。


急落する理由が見当たらない

8月の株価の急落は静かに始まった。「何が起こっているのか分からない」それが多くの投資家の偽らざる気持ちだったように思う。中国景気の悪化は既に報じられていたし、原油価格をはじめ商品市況の軟調も今に始まったことでは無い。つまり、ファンダメンタルズからは、ここまで急落する理由が見当たらない。何が原因か分からないまま多くの投資家は下がり続ける株価を恨めしく見つめるよりほかなかった。こうした状況から、今回の相場下落の要因はファンダメンタルズでは無く、需給面での要因が大きかったのではないかと思われる。

物理学の分析手法を応用して経済現象を研究する経済物理学では、株価や為替相場などの変動には、取引参加者の平均的な戦略が関係するという分析がある。その概要を引用すると次のようになる。

相場の流れに乗る「順張り」の投資家の比率が増えると相場の変動が大きくなる。特に長期の平均ではなく、直前の短期間の傾向に合わせて取引する人が増えると一方向に大きく動くようになる。反対に、相場が上がっているときに売り、下がっているときに買う「逆張り」の人が多いと相場は安定する。

市場では個々の投資家が独自の相場観に基づきバラバラに取引している。この状態では価格変動もランダム(でたらめ)で、一方向に偏ることはまれだ。ところが投資家が周囲に合わせて取引し始めると、途端に不安定になる。このように多数派につく投資行動をトレンドフォロー型という。

1秒間に数千回も売買を繰り返すHFT (高速取引)が増加しているのをご存知だろうか。こうした取引が相場の振れ幅を大きくしているという具体的根拠を見つけることは難しい。しかし、売買の命令を下すコンピューターに順張り戦略のプログラムが組まれていたならばどうだろう。相場の値動きが激しくなると、週単位や日単位の傾向では無く、数時間から数分といった非常に短い期間での相場のトレンドに合わせた取引が合理的であることは間違いない。


「レバレッジ型」のETFの増加

もう一つ、相場の乱高下を助長している原因と考えられるのが「レバレッジ型」ETFの増加だ。日経平均株価の2倍動く「日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(日経レバ)」は8月28日、新規設定を一時停止するという異例の措置を取らねばならないほど資金が流入しているのだ。

こうしたファンドの資金流出入は先物の値動きを増幅する要因の一つとなる。例えば個人投資家から100億円の資金流入があった場合、ファンドの新規設定に伴って、日経平均先物では約200億円の買い需要が生まれることになる。これが先物価格に大きな影響を及ぼしている。三菱UFJ国際投信によると、日本のETF全体の純資産総額に占めるレバレッジ型の割合は27日時点で約6%。米国のETF市場の同比率は3月時点で2%程度という。こうした要因が複雑に絡まって日本株のボラティリティーが高まっていることは想像に難くない。(ZUU online 編集部)

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