◆注目ポイント:設備投資計画

今回の最大の注目ポイントは15年度の設備投資計画だ。設備投資については、前回調査で勢いのある計画が示されていたが、今年度に入り7月までの設備投資関連指標(機械投資の一致指標である資本財出荷、建設投資の一致指標である建設財出荷、設備投資に約半年先行するとされる機械受注など)を見ても、大して勢いを増している感がなく、計画との間にギャップが生じている。

さらに8月は中国不安の高まり等もあったため、企業が様子見スタンスに転じたり、計画自体を見直す動きが出ている可能性がある。企業部門は直近まで過去最高水準の利益を確保し、設備投資の積極化が期待される存在であるだけに、その動向は日本経済の今後にとって重要になる。

◆日銀金融政策:日銀シナリオとの温度差に注目

金融政策との関係という点では、今回の短観の内容と日銀の景気判断・見通しに温度差が生じるかどうかが注目される。

日銀は9月の金融政策決定会合で、海外経済や輸出・生産に対する判断を下方修正したものの、景気の総括判断は「(輸出・生産面に新興国経済の減速の影響がみられるものの、)緩やかな回復を続けている」とし、個人消費に関しても、「雇用・所得環境の着実な改善を背景に、底堅く推移している」と前向きに評価している。

また、景気の先行きに関しても、「緩やかな回復を続けていくとみられる」と、従来から変化はない。9月短観において、足元・先行きの景況感の悪化、設備投資計画の慎重化と言った動きが出てくれば、すぐに追加緩和に至る可能性は低いものの、日銀が警戒を強める材料になるだろう。

日銀短観 図8

また、翌2日に発表される「企業の物価見通し」も引き続き重要となる。企業の物価見通しは、14年3月調査から開始され、これまでのところ、若干下方への動きはみられるものの、比較的高い水準を維持している。これまで、消費者物価上昇率が低下し、低迷する中で、日銀は「物価の基調は高まっている」点を強調し、追加緩和を見送る理由としている。

予想物価上昇率については、日銀が「物価の基調」を判断するうえで、需給ギャップなどと並ぶ重要な要素であり、日銀は現時点において、「やや長い目で見れば、全体として上昇している」との判断を維持している。

予想物価上昇率は計測することが難しく、複数の指標を総合してみる必要があるが、今回発表される「企業の物価見通し」において明確な下振れが認められれば、日銀の「物価の基調は改善」という論理の綻びとなる可能性もあるだけに、その動向は注目に値する。

上野剛志
ニッセイ基礎研究所 経済研究部

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