9月短観予測:中国不安と消費回復の遅れが冷や水に

◆先行きはさらに悪化へ

10月1日発表の日銀短観9月調査では、注目度の高い大企業製造業の業況判断D.I.が13と前回6月調査比で2ポイント低下し、2四半期ぶりに景況感の悪化が示されると予想する。また、大企業非製造業の業況判断D.I.は18と前回比5ポイント低下し、4四半期ぶりに景況感が悪化すると予想。

前回6月調査では、大企業製造業、非製造業ともに景況感が改善していた。しかし、その後に発表されたGDP統計では、4-6月期の日本経済が内・外需ともにマイナス成長であったことが明らかとなり、さらに7月の主要経済指標(消費・輸出・生産など)も総じて冴えない結果であったため、景気の低迷感は前回調査時点よりも強まっている。

中でも、実質賃金の伸び悩みなどから消費の回復が遅れている点は影響が大きい。さらに、8月以降になると、米利上げに伴う新興国不安が燻る中で、人民元切り下げや天津爆発事故、景気指標の悪化など中国に関する悪材料が相次いだことで中国不安が急激に高まり、株式市場では世界的に株価が急落、為替は円高ドル安に振れた。これらは企業の景況感にとってマイナス材料となる。

一方、プラス材料も無いわけではない。一つは中国不安等に伴う資源価格の下落だ。とりわけ原油価格は(円建てで見ても)6月以降に大きく下落しており、日本企業の収益にはプラスに働く。

もう一つのプラス材料は訪日客の増加だ。7月も訪日客の大幅な増加は続いており、インバウンド消費も増勢を続けているとみられる。このように、下支え材料もあるものの、中国不安と消費回復の遅れといったマイナス材料のインパクトはさすがに大きい。

従って、9月短観では幅広く景況感の悪化が示されると見ている。大企業製造業では、主に中国をはじめとする新興国経済の減速ならびに国内での自動車販売の低迷、非製造業では主に消費回復の遅れが影響する形で景況感が悪化するだろう。特に長らく景況感の改善が続いていた非製造業では、その反動も出やすく、製造業よりも景況感の悪化が鮮明になると予想している。

中小企業については、製造業が前回比2ポイント低下の▲2、非製造業が3ポイント低下の1と予想。大企業同様、中小企業でも、製造業・非製造業ともに景況感の悪化が示されると見ている。

先行きの景況感についても、企業規模や製造業・非製造業を問わず、現状比で悪化するだろう。最近の情勢悪化を受けて、内外経済の下振れリスクは高まっており、景気回復シナリオへの慎重な見方が強まっていると考えられるためだ。とりわけ、先行きへの警戒が高まりやすい中小企業非製造業では景況感の悪化幅が大きくなりそうだ。

15年度設備投資計画(全規模全産業)は、前年度比で4.4%増と、前回調査時点の3.4%増から上方修正されると予想する。例年、6月調査から9月調査にかけては、計画が固まってくることに伴って、中小企業を中心に上方修正される傾向が強いため今回も上方修正となるが、例年と比べると上方修正の幅が小幅に留まるだろう。

中小企業では上方修正されるものの、前回調査で例年を大きく上回る上方修正を見せた大企業において、今回は下方修正が行われると見込まれるためだ。大企業では前回が非常に強気の計画であっただけに、経営環境が不透明さを増していることを受けて、やや慎重化すると見ている。

日銀短観 図2-7