◆これまでの議論の概要

企業年金部会での議論の目的は、私的年金を広く普及・拡大させるとともに、それぞれの制度において、退職後所得が着実に形成されるように促すことである。こうした公的年金を補完する役割を強化するための議論は、大きく分けて3つに整理できる。

一つ目は中小企業向けの取組み、二つ目が一般企業向けの取組み、最後がライフコース多様化への対応である。以下に、1月時点で方向性が示された内容を概観する。

中小企業向け取組みでは、通常のDC制度よりも手続等を簡素化した「簡易型DC制度」や、企業年金を実施せずとも従業員福祉を行え、個人の退職後の所得保障の充実を促進できる「個人型DCへの小規模事業主掛金納付制度」を創設する方向性が示された。

また、中小企業がDC制度を実施する場合、投資教育が負担となることから、投資教育については企業年金連合会による共同実施を可能とすることでも合意されている。一般企業向け取組みでは、まずDC制度を通じた積立機能の強化を促す対応策が検討された。加入者の投資関連知識の向上を図る観点から、継続的に実施する投資教育に関する義務の程度を引き上げることが確認された。

また、運用商品を選択し易くする環境整備として、商品ラインナップに関する規定の見直す(最低要件の見直し、ラインナップ商品数の上限設定、商品除外規定の緩和)方向性が示された。更に、デフォルトファンド規定を新たに設けることでも合意された。DB制度に関しては、持続可能性や受給権保護の点で必要性が高まっているガバナンス強化策が議論された。

ライフコース多様化への対応では、個人型DC制度の使い勝手を良くする検討がされ、現行では一部に限られる加入対象者を、第1号から第3号までの全ての被保険者に拡大し、誰もが任意で加入できるように改めることが確認された。また、転職・離職時の年金積立金の持ち運びに関する制約を撤廃し、DB制度、企業型DC制度、個人型DC制度のいずれの間でも、年金積立金を持ち運べるように改めることが合意された。

DC制度を中心とする以上の改善策については、4月3日に法案が国会に提出されており、遅くとも次期国会で成立する見込である。一方、積み残された検討課題としては、DB制度の掛金拠出の弾力化、柔軟で弾力的な給付設計を可能とするDB制度、DB制度とDC制度の拠出時・給付時の仕組みの同一化などがある。

これらは主に一般企業向け取組みとしての検討課題であるが、このうち、DB制度の拠出や給付設計の弾力化の検討が、9月に再開された企業年金部会から始められている。