◆柔軟なリスク分担を可能とする「リスク分担DB(仮称)」の創設

厚生年金基金の役割が大幅に縮小されるなか、我が国の企業年金制度は、事実上、DB制度とDC制度の二者択一となっている。DB制度では運用リスクを原則として企業が負担する。これに対しDC制度では運用成果が給付額に反映されることを通じて、加入者が運用リスクを負担する。このように現在の制度体系は、選択肢が限られるとともに、リスクが一方に偏るという課題を抱えている。

こうした課題に対応し、労使間で柔軟にリスクを分担できる仕組みとして提示されたのが、「リスク分担DB(仮称)」である。ハイブリット型に相当する制度であり、その概要は以下の通りである。

【リスク分担の柔軟性を備える「リスク分担DB(仮称)」】
1)「リスク対応掛金」を活用したDB制度の新たな給付算定方式
2)「リスク対応掛金」を含む全ての掛金を、労使合意により予め固定する制度
3)企業のリスク負担を、リスクバッファーとして拠出する「リスク対応掛金」に限定
4)「リスク対応掛金」を超える財政悪化時には、給付減額により財政均衡を図る仕組み
5)どのようにリスクを分担するかは労使で決定
6)DB制度からの移行時には、「財政悪化時に懸念される積立不足」の2分の1を超え
る「リスク対応掛金」の拠出により給付減額との判定を回避することを検討

DB 図3

「リスク分担DB」は、DB制度の給付算定方式の一つと位置づけられるが、「リスク対応掛金」を含む掛金が予め固定される一方で、加入者・受給者が受け取る給付額が運用成績次第で減額も増額もされ得るという点でDC制度に類似する。

ただし、企業のリスク負担に相当する「リスク対応掛金」を、一定の範囲内で自由に設定できるという点で、これまでにない柔軟性を備えている。この柔軟性は、もちろん、「リスク対応掛金」として設定可能な範囲である「財政悪化時に想定される積立不足」に依存する。

この範囲が小幅に留まれば、柔軟性が限られるとともに、DC的な性質が強まる。逆に、範囲が大きくなれば自由度が増す。この「財政悪化時に想定される積立不足」の幅は、税制との兼ね合いもあり、企業年金制度の柔軟性という点だけで決められない面もあるが、導入効果を高めるのであれば、やはり一定の幅が確保されることが望まれる。