海外事例から学ぶMBOを行う理由

経営陣以外のMBO原資の出し手についても少し触れておこう。日本では、産業再生機構などの官民合同ファンドが、主に企業再建や、技術流出を防ぐために出資することもあるが、野村プリンシパル・ファイナンスやアドバンテッジパートナーズなどの民間ファンドも積極的に関与している。

米国ではシルバー・レイクが有名。これら民間ファンドは、企業価値が上昇した時点で他社への売却、株式再上場などでエグジット(利益確定)し、高リターンを得ることを狙っている。

MBOは1980年代から米国で活発化、日本では1990年代後半から浸透を始め、2011年にはリストラや再建を目的とする案件が急増した。米国の代表例はハードディスク(HDD)最大手メーカーのシーゲートとパソコン販売大手のデルだ。

シーゲートは2000年に総額20億ドルでMBOを行い、その理由を「ウォール街の投資家(の短期視点)を遠ざけるため」と公言している。

また、デル創業者のマイケル・デル氏は、同氏を辞任に追い込もうとしたアクティビスト(モノ言う)投資家から自主経営を守るため、つまり買収回避に向けて2013年に244億ドルで株式を非公開化した。


日本では前向きなMBOは少ない

日本では、このような企業成長のために経営権を守るという、いわば前向きなMBOが少ないのが実情だが、ソフトバンクの孫社長の意図はまさにここにあったのかもしれない。

再建のためのMBOは、ベビー用品事業のコンビ(2010年)やビデオレンタルのカルチュア・コンビニエンス・クラブ(2011年)などの例に見られ、いずれも市場縮小と競争激化で悪化した業容を立て直すのが目的だ。

また、大手企業のリストラに伴うMBOの成功例は、東芝 <6502> の子会社であった東芝タンガロイ(現タンガロイ)だろう。2004年に実施し、08年にはその技術力を買われて著名投資家ウォーレン・バフェット氏の傘下企業に買収されている。

失敗例もある。MBOから時間を経ても業績が好転せず、出資ファンドが経営陣を解任するという事態に追い込まれた、すかいらーく <3197> がそのひとつだ。

ここ1~2年、日本企業の業績が全般に好調なせいか、MBOが少なくなったように思える。しかし好調な時こそ将来を見据えた経営改革を行う好機である。 (ZUU online 編集部)

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