事業承継
(写真=PIXTA)


中小企業経営者が知っておくべき事業承継のポイント

総務省・経済産業省の調査では、日本全国にある約170万社の会社の内、約168万社が中小企業といわれている。日本経済を下支えし、3,000万人以上の雇用を支えてきたこうした中小企業は、バブル崩壊後20年以上経った今も、まだまだ厳しい環境におかれており、いわゆる「アベノミクス」による景気回復の恩恵には浴せていないのが現状だ。

その様な環境の中で、中小企業経営者の多くが悩むのが、「後継者」の不在である。中小企業経営者の高齢化は以下の表のように確実に進んでいる一方、

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経営を引き継がせたい「後継者」がなかなか見つからないため、経営者のリタイア イコール会社の廃業となる事例が多く見られ、今後もますます増えていくのではないかと言われている。

そうなると、中小企業の従業員も失業することになり、失業率が高まって経済に悪影響を及ぼすことになる。 従業員の雇用を守り、日本経済を活性化させるには、中小企業が存続発展し続けることが必要不可欠である。そのためにも現経営者から「後継者」へのスムーズな事業承継が必要になってくる。

そこで今回は、中小企業経営者のための自社の存続発展に必要な事業承継について、知っておくべきポイントをご紹介する。


1.「後継者」を誰にするかを決め、長年かけて教育する

事業承継というと、どうしても「株式対策」とか「M&A」といった方法論・手段に意識がいきがちだが、まず初めに重要なのは、後継者を誰にするのか、を現経営者が“早め”にきっちりと決めることだ。

中小企業経営の後継者として考えられるのは、
(1)現経営者の親族(息子・娘・いとこ など)
(2)(1)以外の幹部社員
(3)他社の経営者
の3つである。そのうち、(3)は、いわゆるM&A(他社による買収)による承継だが、(1)(2)の中で後継者にふさわしい人が見つからなかった場合の次の手段として考えるのが一般的。

事業承継でもっとも多いのは(1)のパターンだが、なかなかうまくいかないケースも多く聞く。 最近新聞を賑わしている、“大塚家具”や“ロッテ”の事例は、まさしくその典型であろう。

失敗の原因はさまざまあるが、
①後継者に社長のイスは譲ったが、先代が経営にいつまでも口出ししている(口出しできるだけの経営権を持っている)
②未だに人事に先代の意向が反映される
③後継者も先代と違うことをしようとして、先代の悪い面ばかりに目が行き、良い面を学ぼうとしない
といった、先代⇔後継者との意思疎通の不足(①②)と後継者への教育不足(③)が根幹にあると思われる。上記の要因は、(2)幹部社員への承継でも起こり得るが、特に親子間、親族間であれば、お互い「言わなくても分かるだろう」という想いが積み重なり、こういう事態を招きやすい。

では、「子供、親族を後継者にしたい」場合、どのように後継者を育成していけば良いのかについて、成功している人の特に参考になる実践法を紹介しよう。

①後継者の育成は、本当に辞めたいと思っている時期の10年前ぐらいから始めること。理由は、後継者の育成に失敗しても復帰できるから。

②社長を辞める時、できたら旧役員には、後継者の補佐役を除き全員退任してもらうこと。旧役員は現社長に目が向いており、新社長(後継者)の足を引っ張るケースが多いからだ。但し、退職金は多く支給して、永年の労に報いることを忘れないこと。

③会長は、社長の椅子を後継者に譲ったらできるだけ口を出さないこと。しかし放任もいけない。週に一度、会う日を決め、堅い会議ではなく、例えば食事を共にしながら2時間ほど議論する場を持つという感覚でコミュニケーションをとる。

④先代の多くは、息子が失敗しないようにとすべてに口出しをしがち。それがかえって息子を潰すことになる。人は失敗と成功を体験して初めて育つものと考える。


2.後継者への経営権の集約

後継者が決まれば、次に後継者に会社経営権を集中させる必要がある。

中小企業の社長になるには、一般的に2つのイスを持つ必要があると言われている。 一つは「社長のイス(代表権)」、もう一つが経営権を集中させ株式を後継者に集中させるための「支配者のイス(議決権)」だ。

事業承継の話をする時に、社長からはしばしば「株式対策がメインでしょ?」と言われる。 そして、「当社は早いうちから私が持っている自社株の贈与を実行し、後継者の息子だけではなく、相続税対策で妻や他の子供にも贈与を実行した。だからご相談するような心配事はない」というものである。実はここに落とし穴があるのだ。念の為、会社の株主名簿を見せてもらい、その自社株対策の中身を見てみると、案の定、相続税対策としての自社株の分散をやりすぎていて、議決権=株式が分散している状態になっているというケースが多くある。

会社の経営で大切なのは、経営者である社長が安定的に経営権を行使できる環境を維持することだ。親族間で株式が分散している場合、かならずしも株主全員が後継社長の意向に沿った議決権の行使をするとは限らない。場合によっては後継者の経営方針に異議を唱えることもありえる。 従って、後継者への株式の「集中」こそが「事業承継」の本質であり、事業承継において優先して抑えておくべきポイントと言える。

では、後継者へどのくらい経営権を集中させれば良いか?というと、最低でも過半数、できれば特別決議が可能な2/3以上(67%以上)を目安にしてほしい。また、後継者1人に集約するのではなく、持株会社・役員持株会・従業員持株会といった、後継者の意思に従った議決権行使をしてくれる複数の株主に振り分けることにより、少ない資金で後継者に議決権を集約することも可能である。(提供: Vortex online

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