理由②勤務経験によってタイプが分かれる

相続税に詳しいか否かを分けるのは、「税理士の資格取得までの道のり」だけではない。実務経験をどこで積むかによっても大きく分かれる。

試験組や大学院組が税理士として登録するためには、税理士試験に合格するだけでなく、2年以上の実務経験が必要となる。一般的に、この実務経験は、会計事務所での勤務経験を意味するように思われているのだが、実際には、一般企業や金融機関などでの経理経験も実務経験にカウントされる。登録に必要な実務経験は、税理士法で「租税に関する事務又は会計に関する事務で、政令にて定めるもの」と具体的に規定されているからだ。企業での経理経験しかない税理士は法人税法や消費税法に強くても、相続税法には暗くなる可能性が高いのである。

また、一口に会計事務所といっても中身は千差万別だ。企業会計がメーンのところもあれば、国際税務をひたすら扱うところもある。一般に、資産税を主に扱う会計事務所や事務所の部門ならば、そこで鍛えられた税理士は相続税に強くなる。しかし、それ以外の事務所や部門の経験者の場合、まったく知らないか、知っていても複雑な案件は扱えないことになりやすい。


優秀な税理士を見分けるチェックポイント

税理士になる過程や実務経験によって、相続に強いかそうでないかの違いが生まれることは理解していただけただろう。しかし素人目には税理士の違いはほとんどわからない。相続が発生した時に、頼りになるか否かをどこで見分けたらいいのだろうか。ポイントは次のようになる。


事務所のホームページやブログをチェック

税理士業界も昨今は飽和状態であるため、一つの事務所でなんでもかんでも請け負うよりも、専門分野に特化してそこで勝負をかけるケースが増えている。そのため、以前より、相続に強い税理士は見つけやすいといえる。

一番のチェックポイントとなるのは、その税理士のホームページやブログである。「相続 税理士」などのキーワードで検索をかけ、そのホームページやブログに目を通してみる。単に「相続大増税時代!」という言葉で煽るだけでなく、相続税の仕組みを丁寧に解説していたり、具体的な事例をあげていたりするところは信用度が高いだろう。

また、細かな税制改正や節税の話題をブログで取り上げて、自分なりの見解を示しているかどうかもチェックポイントとなるだろう。


口コミ

ホームページやブログを立ち上げていなくても、優秀な相続専門の税理士は存在する。そういう優秀な人は大抵、口コミや紹介で仕事を得ている。

相続税は法人税などとは異なり、個人や家といったプライベートな要素が強くなる。AさんにはよくてもBさんとの相性がよいとは限らない。実際に会ってみて直感で判断するのがベストだろう。


本を出版しているかどうか

相続税に強い税理士は、専門分野の本を出版していることも多い。本は基本的に、その分野についての特化した知識がないと書けないのだ。書店に行って本を読み、その文章との相性から税理士を探すのも一つの手だ。


信頼できる税理士を見つけよう

相続というイベントは一時点では終わらない。後々の相続人たちの人生を大きく左右する。人生の一大イベントに関与する税理士の選択は非常に重要となる。相続税に強い税理士を選ぶことはもちろん大事だが、人と人との相性も重視する必要がある。「この人なら信頼できる」という税理士を探しあてるまで、手間をかけるべきだろう。

鈴木 まゆ子(すずき まゆこ)税理士
税理士鈴木まゆ子事務所代表。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。ドン・キホーテ勤務中に会計に興味を持ち会計事務所に転職する。妊娠・出産・育児をしながら税理士試験の受験勉強を続け09年に合格。12年に税理士登録。現在、外国人のビザ業務を行う行政書士の夫とともに外国人の決算・申告・コンサルティングに従事。14年から国際相続などを中心に解説記事作成業務を行っている。8歳、5歳、2歳の三姉妹の母。

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