年金
(写真=ライブリー 退職金と未来のお金)

日本の公的年金は、国民年金・厚生年金・共済年金に分けられ、それぞれが管理や運用をしています。そのため、納付方法から給付方法までそれぞれに違いがありますが、中には考えにくいイレギュラーなシステムも存在します。

今回は、共済年金における退職一時金の返還請求制度についてご紹介します。共済といえば主に公務員や学校職員などが加入する年金ですが、この退職一時金返還制度は国鉄、電電公社といった企業に勤務経験がある方にも少なからず関係のある話です。


その1: 過去の退職一時金を返還しろ?しかも3倍の利息付き!?

例)
Aさんは高校卒業後、自衛隊員として6年勤務したのち、退職して民間企業に勤めました。60歳となり、老齢厚生年金受給手続きをしたところ、かつて加入していた共済年金組合より「退職一時金返還のご案内」が届きました。中身を見てビックリしたのは、30年前に受け取った退職一時金の額9万円と利子相当額30万円、合計39万円を組合に返還しろという請求だったのです。


その2: 退職一時金の返還とは?

昭和36年に国民年金制度が施行されてから、全国民が何らかの年金制度に加入できるようになりました。加えて、単独の年金制度で一定の加入期間(25年)を満たさなくても、各年金制度の加入期間を合計できる通算措置が取られるようになります。

しかし、共済年金には年金受給資格年限以下で退職した場合、申し出によって一時金で加入していた期間を清算する制度が昭和54年12月末まで存在していました。また、清算する方法も、退職一時金を全額受け取る「全額清算」方法と、将来の年金の原資として一部又は全部を残しておく「原資控除」方法を選ぶことができたのです。

ところが、いざ年金を給付する段階にあたり、年金の算定期間に過去の退職一時金受給分の算定期間が重複する場合、退職一時金をもらっていなかった人と不公平が生じてしまいます。

その不公平を埋めるために、昭和61年4月に年金法で新たな対策がとられました。過去に「原資控除」方法で退職一時金を受け取った場合、または「全額清算」しているものの再び公務員などになって合計20年以上共済組合員期間がある場合、過去の退職一時金と利子相当額を共済組合に返還すると定めたのです。

Aさんはこの該当者であり、年金原資を一部残した「原資控除」方法を選択して退職一時金を受けたため、退職一時金と30年分の利息相当額の返還を求められたのです。

多くの人は、年金受給権発生時に初めてこの制度を知り、多額な利息相当額を含めた金額を突然求められて困惑します。それもそのはず、数十年前の退職一時金を受給した際や、昭和61年4月の法改正時、さらに言えば年金受給権発生までの数十年間、返還に関する案内は本人にないからです。


その3: 全額返還しなくちゃいけないの?

残念ながら法律で決められている制度であり、退職一時金返還制度を知らなかったからと、返還が免除されることはありません。返還方法は2種類。ひとつは年金支給額から一定の金額を返還に充当する方法、もうひとつは年金受給後1年以内に現金で返還する方法です。もし返還期限までに返還しなかった場合は支払い督促に発展することもあります。

一見、理不尽な制度かもしれませんが、老齢厚生年金などの算定期間に過去の共済加入期間も含まれることになるので、長い目で見れば、より豊かな年金が受け取れるシステムとも言えます。(提供: ライブリー 退職金と未来のお金 )

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