日本生命による三井生命の買収の背景には、生保業界において1位の座を奪還するという目的のほか、かんぽ生命の生保市場への本格参入を見据え、体力を強化しておく狙いがある。それでなくとも、少子化が社会問題となっている日本では、新規契約者数を延ばしていくことが難しいだけに、業界再編が加速する可能性は高い。


かんぽ生命の信用力に対抗するには

現実問題として、かんぽ生命の株式上場は民間生保にとって大きな脅威だ。かんぽ生命は、地方を中心に圧倒的シェアを誇っており、旧国営という信用を武器に特に高齢者を中心とした消費者の人気は高い。ただでさえ、人口減少で保険料収入は落ち込む傾向にあるのに、さらにシェアを奪われては、経営不振に追い込まれかねない。そのため、生保業界では国内はもちろんのこと、新興国企業のM&Aを模索しようとする動きがみられる。

もっとも、大手生命保険会社は「相互会社」という特有の形態をとっているため、海外の生命保険会社を積極的に買収することは難しい。

相互会社という形態は、株式会社と異なり、いわゆる投資家は存在せず、生命保険契約者が社員としての地位を有している。生命保険契約者の代表者が社員総会によって相互会社の意思決定を行うため、投資家と異なりリスクを伴う投資には消極的なのだ。そのため、海外の買収を加速させる経営戦略については同意が得られにくい。結果として、剰余金で行う小規模な買収しかできないという事情がある。


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