FRBの利上げ観測、中国経済の減速懸念−−−世界の株式市場は、この2つの変動要因の思惑が交錯し、不安定な展開を余儀なくされている。なかでも中国経済への不信感は根強く、市場の下値不安が払拭される見通しは立っていない。ZUUonlineでは、内外で屈指の中国ウォッチャーとして知られる日中産学官交流機構特別研究員の田中修氏を新たな執筆陣に迎え、新連載として知られざる中国経済の深層をリポートする。まずは、世界の株式市場を動揺させた「中国GDP疑惑」の真偽を浮き彫りにして頂こう。

中国経済は試算値でやや好転している

2015年1-6月期のGDPは29兆6868億元であり、実質7.0%(目標7.0%前後)の成長となった。これを2014年以降の四半期別にみると、2014年第1四半期は7.3%、第2四半期7.4%、第3四半期7.2%、第4四半期7.2%、そして2015年第1四半期が7.0%、第2四半期7.0%である。2015年の年間成長率目標は7.0%前後であるので、成長率はぎりぎり目標をクリアしていることになる。ところが、第2四半期の成長率7.0%が発表されると、実体はもっと低いのではないかという疑念が市場に広がり、世界の株式市場は動揺した。

しかし、この四半期別GDP成長率の計算方法は、先進国とは異なることに注意する必要がある。先進国では四半期別GDP成長率は前期比で計算されるのに対し、中国では前年同期比で計算されているのである。これだと成長率は前年同期の経済の状況に強く影響されることになり、足元の経済が悪化しているのか好転しているのかが分かりにくい。

そこで国家統計局は、四半期GDP発表の際に、前期比成長率を試算として示している。それによれば、2014年第1四半期は1.6%、第2四半期1.9%、第3四半期1.9%、第4四半期1.5%、2015年第1四半期1.4%、第2四半期1.7%の成長となっている。これを4倍すれば年率換算となるが、2014年の第4四半期は約6.0%、2015年第1四半期が約5.6%、第2四半期は約6.8%となり、いずれも7%を割り込んでいる。特に第1四半期は6%にも達していない。中国経済は昨年第4四半期から減速していたのであり、本年第1四半期を底に、第2四半期はやや好転していたことになる。

もっとも、前期比はあくまでも試算値であり、3ヵ月ごとにさかのぼって改定される。この意味で前期比は経済のトレンドをはかる指標として考えるのがよい。