都市部と農村部の可処分所得格差は縮小
1-6月期の都市住民1人当たり平均可処分所得は1万5699元であり、前年比実質6.7%(名目8.1%)増加した。農民1人当たり可処分所得は5554元であり、同実質8.3%(名目9.5%)増加した。農民の収入の伸びが都市住民の収入の伸びを上回っており、この結果一時は3倍以上になっていた都市・農村1人当たりの可処分所得格差は、2.83:1と前年同期より0.04ポイント縮小している。
また都市・農村を合計した全国住民1人当りの可処分所得は1万931元であり、実質7.6%増と成長率を上回った。習近平指導部は消費振興のため、労働分配率の引上げを図っており、全国住民1人当りの可処分所得が成長率を上回ることを目指している。
都市登録失業率は労働需給全体を反映していない
1-6月期の新規就業者増は718万人であり、年間目標「1000万人以上」の71.8%を達成した。6月末の都市登録失業率は4.04%と、年間目標「4.5%以内」をクリアしている。
ただ、中国の都市登録失業率統計からは出稼ぎ農民が除外されており、労働市場の需給全体を表わしてはいない。このため李克強総理は「調査失業率」という新しい失業統計をテスト中であり、これによると失業率は5.06%となっている。
中国から米国へホットマネーが流出
6月末、外貨準備は3.69兆ドルであった。3月末の3.73兆ドルに比べ、0.04兆ドルの減少である。この減少には2つの側面がある。第1に、中国は外貨準備の通貨を多様化しているが、現在ドルに対しユーロ・円いずれも弱含みとなっているため、ドルベースに換算した場合に外貨準備が目減りしている。第2に、最近の不動産市況の低迷とFRBの利上げ期待を背景に、ホットマネーが中国から米国に流れ出しているのである。
また、8月11日に人民銀行が対ドルレートの基準値を変更して以降、人民元は切下げ圧力にさらされており、人民銀行はドル売り介入を行っている。このため、8月は外貨準備がさらに939億ドル減少し、8月末では3.56兆ドルとなった。
今後FRBが利上げをすると、高い金利をねらって中国から米国に資金の一層の流出が懸念されている。
【筆者略歴】
田中修(たなか おさむ)
日中産学官交流機構特別研究員
1982年東京大学法学部卒業、大蔵省入省。1996年から2000年まで在中国日本国大使館経済部に1等書記官・参事官として勤務。帰国後、財務省主計局主計官、信州大学経済学部教授、内閣府参事官を歴任。2009年4月〜9月東京大学客員教授。2009年10月~東京大学EMP講師。2014年4月から中国塾を主宰。学術博士(東京大学)。近著に「スミス、ケインズからピケティまで 世界を読み解く経済思想の授業」(日本実業出版社)、「2011~2015年の中国経済―第12次5ヵ年計画を読む―」(蒼蒼社)、ほか著書多数。