「当たり屋につけ」とは、株式相場で儲けている投資家がいたら、同じ投資行動をとれという意味の相場格言である。儲けている以上、当たり屋には運があり、素人が追随すると良い結果が得られる、というわけだ。ほぼ同じ意味で、損をしている投資家(当たり屋の反対の「曲がり屋」)とは正反対の投資行動をとれという「曲がり屋に向かえ」という格言もある。
投資の専門家の行動に便乗し、同じ銘柄を買うことを「ちょうちん買い」と呼ぶ。夜道などで同行者のためにちょうちんで明かりを照らす人物を指す「ちょうちん持ち」に由来する相場用語だ。
ある銘柄が一定期間をかけて上昇していく過程では、積極的に買い進める投資家の周りに、コバンザメのように同調する参加者が増える。ちょうちん買いは、「当たり屋につけ」を実行した買いということができる。
当たり屋はどこを探せば見つかる?
相場は上がることもあれば、下がることもある。相場師が売り手と買い手に分かれ、がっぷり四つの戦いをすることは理論上、あり得ないことではなく、長い日本の株式市場の歴史でも伝説として残る対決はあった。しかし、おそらく大半の場合は、良いニュースが出れば買いたい人が売りたい人を上回って株価が上がり、逆に悪いニュースが出れば売りたい人が買いたい人を上回って株価は下がる、この2つのことを時間の経過とともに繰り返しているだけだ。
相場が動くときには、売りと買いの、どちらか強いほうに投資家が集中する。買い手が多くなる局面では同調して買い、売り手が多くなる局面では売る。それがあて外れで損失を被るリスクを下げることになる。以上が「当たり屋につけ」という格言の説明となる。
しかし、この格言を実践しようとすると、すぐに問題に突き当たる。それは「当たり屋はどこを探せば見つかるか」が分からないということだ。ひと相場を当てて儲けた投資家が、いつ、どういう考えに基づいて、どの銘柄を買ったかということを、リアルタイムで察知できることはほとんどない。