連日世界中で報道されているVW(フォルクスワーゲン)の排ガス数値偽装問題。今回の対象となるEA189ディーゼルエンジンを搭載した車は全世界で1100万台ある。また同社は、2015年第3四半期に特別損失として65億ユーロ(8700億円)を計上するという。フランクフルト証券取引所での株価は9月17日から9月22日までで、34%も下落し、時価総額3兆円以上が飛ぶ強烈なものとなった。

優先株のシェアはカタール・インベストメント・オーソリティ(QIA)が12.81%、無記名株式の方は、ポルシェが50.73%、ニーダーザクセン州が20.00%、カタール・インベストメント・オーソリティが16.99%の持分となっている。これだけ株価が急落してしまっては、投資家からの厳しい追究から免れようがなく、早速米国では投資家による集団訴訟が起きており、費用と時間のコストが膨大なものになると思われる。

CEO辞任、スズキとの提携解消

そのような中、先日VWグループの元CEO、ヴィンターコルン氏が引責辞任したのを継いで、マティアス・ミュラー 氏がフォルクスワーゲングループ取締役会会長に就任することとなった。ミュラー氏は、後任が確定するまでポルシェAGの取締役会会長も兼務する。

さらに日本では、VWといえば提携解消をしたスズキ <7269> との関係性に注目している人も多いだろう。VWはスズキの株を売り、売却益が2000億円に、そしてスズキは439万7000株のフォルクスワーゲンAGの普通株式をポルシェ・オートモービル・ホールディングSEに売却した。売却益は約367億円で、第2四半期の特別利益に計上される予定だ。

トヨタを抜いて世界販売首位もつかの間

VWは昨年、世界の販売台数がそれまで首位だったトヨタの1016万8000台を抜き、1021万7003台で1位となったばかりだ。しかも、皮肉なことにVWゴルフは、2015年初めのデトロイトモーターショーで「北米カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、表彰されている。日本でも2014年に、ゴルフは輸入車で初めてカー・オブ・ザ・イヤーを受賞したことは記憶に新しいだろう。

今回問題となったクリーンディーゼル車は、ヨーロッパでとくに支持を得ていた技術である。自動車は、ガソリンの代替エネルギーを開発してきた歴史といっても過言ではない。ガソリンよりも「環境に良い」、「取得コストが安い」技術を開発し、先行者利益を得ようと各社が必死に研究をしてきた。とはいえすべての要素が同時に成立することはたいへん難しい。そのような中、ディーゼルは燃費が良いうえにCO2の排出が少ないので環境に良く、取得コストも抑えられ、さらに走りの良さを犠牲にしない画期的な技術としてもてはやされてきたのである。