TPPで泣く5つの企業

明治ホールディングス <2269>

乳業トップの同社はTPPが悪材料となってしまう可能性のある企業である。TPPでは、牛乳やヨーグルト、バター調整品等の関税がこれまでは生乳換算で1万8977トンまでは12%~35%だったのが、今後は6年目までに50%~90%削減、または撤廃されることが決まった。そのため、ブルガリアヨーグルトをはじめとするヨーグルトが好調な同社は安価な競争相手に苦戦する可能性がある。

森永乳業 <2264>

同社は2015年度3月期の決算で総売上高は前年度比0.2%増だったが、家庭用バターの売上は前年を下回っており、苦戦を強いられている状態である。今回のTPPによって、バターの代替品として使われる乳製品「調整食用脂(PEF)」に現行で25%かけられている高関税が、11年目までに80%削減されることが決まった。こうしたことから、長期的には森永乳業はバターの分野で特に業績を悪化させることになる可能性がある。

雪印メグミルク <2270>

TPPによる関税撤廃が合意に至ることで、内外価格差の大きなバターや牛乳の輸入が増えれば、陳列スペースに限りのあるスーパーなどの小売業は従来商品と新たに入ってくる安価な乳製品とを一部入れ替えることになるかもしれない。その場合、明治ホールディングスや森永乳業の商品よりもシェアの低い同社の商品が入れ替え対象となる可能性が高い。そのため、同社は輸入される安価な乳製品との競争の場にすら立たせてもらえず、上位2社よりも早く、かつ、より業績が悪化する可能性がある。

江崎グリコ <2206>

同社の基幹商品はポッキーやGABAなどのチョコレート商品である。これまではチョコレート菓子への関税率は10%であったが、今後はそれがTPP参加国からの毎年の輸入量に相当する9100トンの枠内において関税が撤廃されることになる。

これはチョコレート菓子の国内生産の約4%に当たる数量になる。また、ビスコやプリッツといったビスケット商品にも安価な海外商品が新たな競争相手として登場する可能性が高い。ビスケットにはこれまで20%の関税がかけられていたが、その関税も11年目で撤廃されることに決まった。こうしたことから、同社にとってもTPPは悪材料となる可能性がある。

森永製菓 <2201>

同社はチョコボールやダースといったチョコレート菓子が主要な商品の一つとなっており、TPPによって江崎グリコと同様に打撃を受ける可能性がある。また、それ以外にも、ココア粉の関税が21.3%から11年目までに10.7%へと半減することや、アイスクリームが21%~29.8%の関税が6年で63%~67%削減されること、氷菓も現在21.3%~29.8%の関税率が11年目で関税撤廃されることが決まっている。

同社はこれらの分野において、ココアミルクやチョコモナカジャンボといった商品を投入しているため、チョコレート菓子だけでなくココア食品やアイスなど売上の9割以上を占める菓子食品部門全体に悪影響が生じる可能性がある。 (ZUU online 編集部)