稼ぐ力と将来性は未だ未知数
国民の税金で運営されている国営企業なら、営利追求よりも国民の利便性が優先されますが、民間企業ともなればいくら規模が大きくても他社と激しく競争していくことになります。今はグローバル競争の時代ですから国際競争も意識されます。さらにBIS規制など国際的なルールにもより強く影響されることになります。
上場後、日本郵政3社がすぐに市場に適応し、稼ぐ力を示し、将来、多くの利益を獲得し続けられるかどうかは今のところ未知数です。しかし、過去の官僚のリードから脱皮し、株主意見が経営に反映されるため、今までとは違う経営に転換し、収益性が向上する可能性があります。
日本郵政3社の過去5年の業績推移を見て、「成長性は見込みにくいのではないか」という声があるのは事実ですが、改正郵政民営化法によって、株式の半分以上を売却すれば、日本郵政の収益の9割を稼ぎ出す、ゆうちょ銀行とかんぽ生命で新規商品の販売が認可から届出に緩和されることを考えれば、ある程度、展望が持てると思います。
日本郵政3社に関しては日米構造会議などを経てアメリカからの強い要望があったという指摘があります。
「2013年5月、TPP(環太平洋経済連携協定)の協議過程で、米国から、傘下のゆうちょ銀行とかんぽ生命が日本郵政の完全子会社のままでは日本郵政を通じた政府の関与を否定できないことから、市場において民間企業との対等な競争関係を構築できないとして、新たなサービス・商品の開発・販売は認めるべきではないとの趣旨の指摘があった」と一般財団法人ゆうちょ財団の金融コラムにも書かれています。株式上場や今後の展開についてはTPP推進とも密接な関係があると考えられますから、国民財産の行く末には重大な関心を寄せておきたいですね。
ROEと外国人持ち株比率に注目
最後にROE(自己資本利益率)と外国人持ち株比率について考えてみましょう。
2015年4月データでゆうちょ銀行のROEは3.2%、かんぽ生命保険の場合は4.6%です。他の企業と比較すると、第一生命が4.5%、業態は違いますがソニーFHD10.8%、T&G5.8%ですから、数字は小さいものの、水準としては極端に少ないわけではありません。
他社の外国人持ち株比率については、三菱UFJHGは39.9%、三井住友FGは48.6%。第一生命43.3%、ソニーFHD26.4%、T&GHD 39.8%となっています。これらと比較すると、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の外国人公募株の20%はいかにも少ないですよね。つまり、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険が外国人投資家によって買い増しされる可能性は高いと見ていいでしょう。
次回は日本郵政3社の妥当株価を検討したいと思います。
【著者略歴】木村佳子(きむら よしこ)
NPO法人日本IRプランナーズ協会理事。日本チャート分析家協会、一般社団法人くらしとしごと生活者フォーラム代表理事。一級FP技能士(国家資格)。日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFP。2013年4月より東証アカデミー、フェロー。個人の生活経済、金融リテラシー、ストラテジーをテーマに民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催するセミナー等での基調講演を務める。公的面では各省庁の審議会委員、専門委員などを務める。
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