(写真=PIXTA)
意外と高い投資信託の手数料
投資には実に多くのコストがかかっており、投資はコストとの戦いでもある。実際にどれだけの費用を投資家が負担しているのかを、新光投信が運用する新光US−REITオープン「愛称:ゼウス」を例に検証してみよう。米国の証券取引所に上場している不動産投資信託(US-REIT)を主要投資対象としているが、10月16日時点での純資産は1兆3194億円と巨大な投資信託だ。
1000万円でこの投資信託を購入したと仮定しよう。最初にかかる費用として購入手数料が挙げられ、目論見書の記載では税込3.24%となっている。購入時に32万4000円が差し引かれることになり実際の運用は967万6000円でスタートする。購入手数料は申込価額の1%から3%に設定されていることが多く、一般的に複雑な運用を行うものほど高い手数料が必要になると考えてよい。また、この手数料には消費税も課税される。
次に投資信託の運用会社に管理手数料として支払う「信託報酬」は年率1.6524%となっており、1年間で15万9886円が間接的に差し引かれることになる。1000万円の投資額はここまでだけで951万6114円に目減りしてしまう。信託報酬は投資信託の信託財産から間接的に支払われるので軽視しがちだが長期保有ではかなりの金額になる。投資信託によって料率は異なるが、年率でいくら支払うのか、目論見書などに記載されているので必ず確認が必要だ。
さらに運用の結果発生する費用であり、事前にいくらかかるのか示すことができないので目論見書などには明示されていないが、投資信託は原則決算ごとに、監査法人などから監査を受ける必要があり、その監査に要する費用も、投資信託の信託財産から間接的に支払われる。投資信託が投資する株式などを売買する際に発生する費用も発生の都度、信託財産から間接的に支払われている。
投資信託の売却の際、「信託財産留保額」が差し引かれる投資信託もある。信託財産留保額とは、受益者が換金する際に必要な事務手数料である。信託財産留保金を徴収しなければ、これらの手数料は残存する受益者が負担することになるので不公平が生じる。これを回避するために徴収される。
このようなコストを換算すると、ざっと見て1年間で5%を上回る運用を行わなければ利益を出せないことになる。またこの投資信託では0.1%の「信託財産留保額」が必要である。さらに20.315%という所得税が課されることを考えると、投資はコストとの戦いであることが分かるだろう。
証券会社の「うま味」は株より投資信託が多く
手数料がかかるのは投資信託だけではない。株式投資でも証券会社に売買手数料を支払うことになり、利益に対しては20.315%の所得税が課される。
ただし現物株の取引手数料は最近、ネット証券の台頭により随分と安くなっている。売買代金によって手数料は変わるが数百円から数千円となっている。この手数料では証券会社にとってうま味がないことは事実である。かつては回転売買による手数料稼ぎが問題視されたこともあったが、これだけ手数料が低下すればもはや証券会社にとってもうま味のある商売ではなくなっている。その一方で投資信託は販売会社にとってまだまだ手数料収入が稼げる金融商品であることは間違いない。
コストを抑える方法
①販売会社間で手数料を比較する
実は投資信託にかかるコストの中でも購入時の手数料は運用会社が上限を定めているのみで証券会社や銀行など販売会社によって差がある。もし、お目当ての投資信託が決まっているのであれば販売会社間で手数料を比較すべきである。1000万円の投資信託を購入すれば、1%の手数料の違いが10万円になるのだから検討する価値は十分にあるだろう。
②NISAを利用する
NISAをうまく利用することもコスト引き下げの有効な手段だ。毎年100万円までなら値上がり益や運用益が非課税となる仕組みである。運用成果に大きく左右されるため、その効果を事前に見極めることは難しいが利用できるものは利用すべきだ。
③確定拠出年金を利用する
最も投資のコストを節約できるのは確定拠出年金だ。確定拠出年金は国民年金や厚生年金に加えて加入できる年金の仕組みで、毎月一定の掛け金を運用し、60歳以降に受け取る。本人が運用を行いその結果により年金の給付額が変わる。
この確定拠出年金には大きな節税効果がある。まず、掛け金の全額が課税対象となる所得から引かれるため、その分所得税や住民税が安くなる。さらに運用益にも税がかからない。受取時にも退職所得控除か公的年金等控除の対象となる。このように3段階で節税の効果が期待できるのだ。
日経新聞の試算では、年収600万円の30歳会社員が毎月2万円を積み立てると、所得税は単純計算で年4万8000円少なくなるという。30年続ければ、その節税額は144万円に達する。毎月2万円を積み立て、年2%の運用を30年続ければ通常の運用より、課税されない分複利効果が大きくなり、節税効果は総額で200万円を超す。
60歳まで引き出せないというデメリットや、利用する側が自ら手続きを行う手間などがあるため、確定拠出年金の利用者はサラリーマンの3割程度にとどまるとされているが、利用しないのは損である。
投資にあたっては高いリターンを得ることにどうしても目が行きがちであるが、コストについても目を向けるべきである。高いリターンを求めて無理な運用を行うよりも、コストを下げることのほうが中長期の安定的なリターンを狙えるとともに、リスクを下げることも可能になるはずだ。 (ZUU online 編集部)
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