中国経済の減速に端を発する世界経済の後退に対する市場の恐怖が高まり、相場が乱高下した8月と9月の「荒れ模様」は、ひとまず沈静化しつつある。しかし、世界最大の資産運用会社ブラックロックのローレンス・フィンクCEOは10月14日、「市場の高いボラティリティ(不安定性)は、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに関する立場を明確にするまで続く」と予言した。

では、こうした「高ボラ」相場を乗り切るには、どのような投資が有効なのだろうか。ピムコ前共同CEO兼CIO(最高情報責任者)で、独アリアンツ経済顧問のモハメド・エラリアン氏は10月8日付のコラムで、「優良銘柄を安値で掴めるチャンスだ。発行済み株数が少ないため流動性を欠き、乱高下で簡単に値を消す優良銘柄は、注目すべきだ。逆に、発行数が膨大で、誰もが保有しているような優良銘柄も買いの機会だ。乱高下の局面でそのような銘柄は、株式以外の資産で流動性を欠く投資家に、ポートフォリオの流動性を高める資産再編の機会を与える」と助言した。

さらにエラリアン氏は、「相場が激しく下げ、再び大きく上げる局面は、ポートフォリオの構成銘柄を入れ替えて、その質を高めるチャンスである。その際に買うべきなのは、バランスシートが強靭で、負債も小さく、マネージメントが健全であり、競合企業が簡単にマネできない強みを持つ会社だ」とした。

加えて、「毎月一定額ずつ同一銘柄に投資するドルコスト平均法(価格が高い時には購入数量が少なくなり、価格が安い時には購入数量が多くなるので、投資家は購入平均コストを下げることができる)も、高ボラティリティ環境では有効だ。短期的に下げた石油や新興国関連の銘柄を注意深く選択すれば、長期的な益が見込まれる」という。

また、「現金保有を戦略的に増やすことで損失に備え、中央銀行の金融政策に左右されにくいITスタートアップ企業なども注目すべきだ」と述べている。著名投資家のビル・アックマン氏も10月6日、「ボラティリティが、長期的な視点から割安の株を漁る投資家には、よいチャンスだ」と述べている。

一方、エラリアン氏やアックマン氏の推奨する投資手法は、「言うは易し、行うは難し」だとする識者もいる。GAM のチーフエコノミスト、ラリー・ハザウェイ氏は10月14日、経済専門局CNBCの番組に出演し、「強靭なポートフォリオを構築することが、ボラティリティを乗り切るうえで一番大切だ」と述べて、エラリアン氏に同意した。その上で、「一般的に関連づけられていない、違う種類の資産を組み合わせる手法は困難であり、維持するのはもっと難しい」と指摘。「投資家は、市場の全体的なリターンの影響を受けにくい資産で利益を上げなければならない」とした。


現金へのシフトも選択肢に

翻って、LLMインベストメンツのビル・ミラー会長は10月14日、「投資家が債券から資金を引き揚げて一斉に株式に振り向けるなら、米株式は1990年代後半に年率20〜30%上昇したような動きを再現するかも知れず、それが心配だ」とCNBCで語った。そして、「そうした状態が2〜3年続けば、リターンの高い資産は枯渇してしまう可能性がある。私は、(ボラティリティで)株式市場のリターンが下がることより、そちらの方が心配だ」とした。

エラリアン氏と共にピムコ前共同CEOを務めたビル・グロス氏は10月6日、「現在の相場の不安定さは、米株式をさらに10%下落させるだろう」と予測し、「投資家はボラティリティを、現金で乗り切るべきだ」とブルームバーグ通信に対して述べている。

(在米ジャーナリスト 岩田太郎)

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