ROE経営重視
(写真=PIXTA)


ROE8%以上を提言 2014年の伊藤レポートによる衝撃分析がじわじわと浸透

ROEとは、リターン・オン・エクイティの略で自己資本利益率とよばれている。

このROEは国際的に見ると、欧米企業が平均10%以上なのに比べ、日本では平均5%台と、その低さが問題視されている。

ROE重視経営は上場企業なら当たり前のようにも思えるが、いまあらためて注目されているのは、アベノミクス主導による以下の改革がはじまったからだ。そしてまとめられた伊藤レポートをみてみよう。


ROE重視経営が再注目、海外企業の約半分のROE

ROEの重要性が再注目されているのは、アベノミクスの日本再興戦略において日本企業の低生産性が指摘され、ROEの改善による企業の活性化を求められたからだ。これに関連し昨年提出された、一橋大学院の伊藤邦男教授による「伊藤レポート」がじわじわと注目されはじめている。

「伊藤レポート」は日本企業の過去20年以上を分析、その長期的な低収益構造を分析し、ROEの重要性を改めて提言した。

20年以上に渡って長期的な成長を達成した企業と、短期的な利益追求に終始している企業の分析など、一読の価値あるすぐれた提言ばかりである。

何よりこのレポートは、数十年たっても日本に根付かない、「貯蓄から投資」の流れを進める上での大事な一石であると言える。


日本版スチュワードシップ制、コーポレートガバナンス・コード「JPX400指数」の登場

伊藤レポートと同時期に出たコーポレートガバナンス・コードが、ROE重視をさらに後押ししている。

これは上場企業の経営陣に対する規範であり、取締役会などに対しROEが持続的な経営の指針であることが示された点で重要だ。

上場企業にとってあらためてROE重視の姿勢を問われることになる。

同時に投資家側からも日本版スチュワードシップ・コード宣言がなされ、主な機関投資家が2014年に採用した。これによって年金などの機関投資家は責任ある投資家として、相応の経営監督責任を負うことになる。


東証JPX400指数登場

JPX400指数とは2015年1月から採用された、投資魅力のある企業で構成された株価指数で、年金等の機関投資家、投資信託などは今後、この指数に基づき株式を組み入れる可能性が高い。

この指数に採用されるためには、一定以上のROEに加え、財務の健全性をはかる自己資本比率などが勘案される。ここに採用されることは新たな株主を獲得する事につながるため、企業側にもROEを高めるインセンティブが働いている。


あらためてROEとは何か

ROE=当期純利益/自己資本

自己資本で企業の当期純利益を割った数字がROEという指標である。

ROEは、
ROE=当期純利益/自己資本=当期純利益/売上高×売上高/総資産×総資産/自己資本
(売上高利益率)(総資産回転率)(財務レバレッジ)
のように分解できるが、伊藤レポートでは「ROEを売上高利益率、資本回転率、財務レバレッジに分解し、それぞれ日米欧で比較すると、回転率やレバレッジには大きな差がない。日本企業の低ROEは売上高利益率、つまり事業の収益力の低さによるところが大きい。」という見解が示されている。そのうえで、日本企業は、資本コストを超えた経営をすべきであると提言している。

グローバル投資家の最低投資基準は『ROEが8%以上であること』といわれており、日本企業もそれに近づくことが期待される。


ROEを上昇させるためには 自社株買い、配当、不要資産の売却

自社株買い、配当、あるいは不要資産の売却による、収益を生まない資産のリストラもROEを上昇させる有効な手段と言える。

不要資産の売却は総資産回転率を上げることになる。さらに不要な在庫も処分し、営業キャシュフローを高め収益を上げる事がROE上昇のためには必須と言える。

中長期に株式市場が発展していき、貴重な年金資金、老後資金として資産を増やすためには、投資対象である企業の改革が不可欠である。

個人、機関、外国人、すべての投資家にとって、非常に重要な改革が現在進んでいることに注目したい。 (提供: Vortex online

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